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第43回京の冬の旅 特別公開 2009年3月14日

妙心寺塔頭衡梅院

みょうしんじたっちゅうこうばいいん

京都府京都市右京区花園妙心寺町64

JR山陰本線花園駅下車徒歩5分

マピオン

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妙心寺塔頭衡梅院

衡梅院は妙心寺境内の南東部に位置し、三門からはそれほど距離はない。

三門の先には庫裡が見える。このように庫裡が山門から直線で進んだところに位置する例は、禅宗寺院では珍しい。だいたいアプローチの途中で必ず折れたりするものだ。

今回も境内図を描いていく。

衡梅院にはほとんど枯山水はなく、だいたい苔庭が占めている。

左画像は山門をくぐってすぐのところ。庫裡へは右の垣を進んだ先にあるが、玄関へは二回直角に折れる。白壁に付いている小さな扉は、内部の露地庭園に繋がっている。ただし通行不可。右画像は玄関から壁を見たところ。壁の右側が露地庭園。

玄関。だいたい塔頭寺院というと、玄関は閉まっていて、庫裡から入るようなところが多いが、衡梅院は違っていた。寺名の由来はよく分からず。

玄関から方丈へとアクセスする途中で、立派な露地庭園を横切る。案内員は方丈の説明が始まるからと急かしているが、こんなに立派なものを捨て置けない。方丈の南東には茶室が接続されており、この庭園は先ほどの小さな勝手口から茶室へとアクセスする際の露地として機能している。実際、飛び石が設置されている。

露地庭園北部分にはこっそりと手水鉢がある(右画像)。飛び石を歩いてここにも来られる。茶室に入る前に手を清めるためのものかもしれない。

さて、こちらがその茶室。灯籠などもある。灯籠は茶室へのアクセスを前提とした露地には欠かせないアイテムのようだ。

茶室の北側には、この茶室の名である「」と書かれたプレートが下がっている。プレートと言っても丸太をスライスしたようなものだ。

茶室にはたくさんの小窓があるが、どれも個性的なかたちをしている。一番左は、自然にうねった木のラインを活かしたものになっているし、その隣りは真四角だ。手前側は火頭窓に似ているが、ちょっと違う。明かり取りのためのものだろうか。それぞれをいちいち開け閉めするようなことは無いように思う。

こちらは茶室入り口にかかっているもの。達筆過ぎて何と書いてあるのか分からない…。

茶室の内部。柱や梁に、自然にうねった木をそのまま使用している。天井は木の皮をそのまま張り付けているという奇想。

さて、方丈前庭を。「四河一源の庭」という名がついている。ここの の弟子四人が 派閥を作ったとかで、四人の流派をそれぞれ川に喩えている。一面をスギゴケで覆われた庭だ。思うに、これは海を暗示しているのではないだろうか。四つの川は水源を同一にするが、それぞれが最終的に注ぎ込むのは海であり、また同一。方便はそれぞれ別でも、出発点と最終到達点は一緒である、ということを意味しているのではないか。

庭園の中央には平たい石が置かれている。他の寺院ではこういうのを座禅石と呼んだりするものだが、特に何も説明は無かった。

左画像は、方丈前庭の東端、右画像は西端。それぞれが何を意味しているのかよく分からないが、水源を表す滝、あるいは三尊石だったりするのかもしれない。

方丈に掲げられた「四河一源」の額。下の透かし彫りが大海原を意味するものであるなら、前庭で推理した、最終到達点は海で一致している、ということなのかもしれない。

あるいはただの川における波濤かもしれないが…。

さて、方丈内部は大岡春卜による襖絵が展示されていた。東の間には獅子が群れていた。それぞれユニークな表情をしているので興味深い。

耳が垂れているのがポイント。

獅子といえば肉筆画では勇猛な武士を暗示したりするものだが、水墨画ではちょっとおどけたキャラクターになっていたりする。

方丈真ん中の間、室中の間。ここの襖絵は「龍虎羅漢図」と言われる。「龍虎図」、あるいは「羅漢図」なら他でもよくみかけるモチーフだが、ここではそれらをごちゃまぜにしている。上の襖絵では羅漢が虎と一緒に描かれている。そして、四つの襖と向かい合わせになっている反対側の襖には、龍と羅漢が描かれている。

龍と一緒に描かれているのは、片方の肩をはだけて遠山の金さんばりに見栄を張っている羅漢。それと頭上で手を「○」としている羅漢、あるいは童子。なんともお茶目なポーズだが、○は円相といい、仏教では悟りを暗示している。

室中の間の中心には額が下がっており、「国圓本勅師遍源諡」と書かれている。

こちらは西側の部屋(上間の間、旦那の間)の襖絵。山水画がモチーフになっている。全ての襖絵は大岡によるもの。それぞれ全く違ったタッチになっており、相当の達人だったと見える。

ところで山水画は山深い風景をモチーフとして描くものだが、必ずと言っていいほど人間が描かれている。しかしごくごく小さく。勝手な推測だが、わざわざ人間を登場させるのは、世界を前にしたら人間などごくごく小さい存在でしかない、という比較材料としてなのだと思う。

左手側は方丈、右手側は庫裡。その先には坪庭があった。方丈とその北側に位置する書院が渡り廊下で接続されている。

さて、衡梅院を出よう。出てすぐに雨がやんだ。天気予報では午前の早い内に雨が上がり、以後は晴れるとのことなので、もう傘はいらないだろう。

衡梅院の向かいには経蔵が建っているが、方丈池のようなところに浮かんでいて独特だ。

経蔵へのアクセスは途中で折れている。まっすぐに向かわせないのは、塔頭寺院などが確保する動線に通ずるものがある。

西洋の美意識だったらまっすぐ進ませるだろう。途中で折れ曲がる、ということは、左右非対称ということになる。対称性が西洋の美意識なら、非対称性は東洋の美意識だ。

ここは衡梅院の北に位置し、公開塔頭の大心院の向かいに建つ非公開塔頭の東海庵。見事な枯山水庭園を持つというが、これまで特別公開などに参加できたことはない。

庫裡前庭園には瓦が並べてあって独特。梅がちょっとしたアクセントを加えている。可憐という言葉がぴったりだ。

次の訪問先は仁和寺。妙心寺からは充分歩いていける距離だし、その道すがらお昼ご飯を頂く予定。妙心寺の広大な境内を北に向かって進む。

妙心寺北門すぐのところに建つ塔頭天球院。名前が独特だが、池田光政の夫人の法号だとか。残念ながらここも通常非公開。過去には公開された実績があるようだ。

この塔頭も、先に見える扉(おそらく方丈前庭へ通じる勝手口か)に向かってまっすぐに参道が延びていない。途中に微妙な「折れ」がある。玄関は突き当たり右に直角に曲がったところにあるかと思う。

これは天球院の向かいに建つ塔頭隣華院。

京都古文化保存協会が主催する春の特別公開(5月上旬)にて公開されることが判明している。2ヶ月後、ここを訪問する予定でいる。

ここでも先に見える庫裡へは、山門をくぐった後、微妙な「折れ」を経由して到達する動線になっている。つくづく面白いし、こういう非対称の美が好きだ。

隣華院には、二つの輪が微妙に重なっている数学のヴェン図のような紋が至るところに意匠されている。瓦は分かるとして、左画像「にょき」と出ている石は何だろう。

妙心寺の境内に流れる水路、あるいは堀か。今までこういうのを見逃してきた。というのも、垣が高く、その先がどうなっているのかよく分からなかった。今回は塔頭寺院へ架かる石橋から眺められるということに気づいた。

水路といっても、今日のように雨が降ったときくらいしか水が流れないような印象。参道と塔頭を分ける、型式だけの水路かもしれない。あるいは雨天時の排水路か。

妙心寺境内を出て、北西に延びる道を歩く。この先に仁和寺があるが、途中に嵐電妙心寺駅がある。微妙なカーブを描いて伸びていく線路と、それに付随する小さなプラットホーム、この風景が何ともいえない郷愁をさそう。

やってきた電車はレトロなデザインだった。後でこのタイプの電車に乗ることになる。

駅から少し歩いたところにある「おからはうす」というお店。ここでお昼ご飯。すっかり雨はやみ、晴れ間も出てきた。桃の節句が終わって10日も経つというのに、まだひな壇が飾られていた。ここでは日替わりの総菜が二つつく定食が定番。

真ん中がおから。しっとりしていてパサツキがなくとても美味しかった。右上はジャガイモのあんかけ。あっさりとしていたが、かなり気に入った。なぜかとろろまでついていて嬉しい。右画像は限定のおからコロッケ。あおさのりの天ぷらがつく。これもほくほくしていて美味しかった。

おからはうすからそれほど離れていないところに建つフランス料理屋。まだ営業していないようだが、骨だけになった魚の看板がユニーク。

後日、お得意先の方と妙心寺〜仁和寺界隈の話になり、このお店「「せき」が話題に登った。その方はここの常連らしく、とてもおいしいとのこと。プロヴァンス風なので、カエルが出るとか。

「只今 金欠病中につき 一切のセールスは お断りします」

窓ガラスが割れたままなのが、説得力がある。

またまたユニークなお店。「あげた亭」という名のフライ料理の定食屋さん、かな?

だいぶ晴れ間が覗いてきた。

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