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フエの阮朝史跡探し 2018年2月27~3月4日

長豊陵

Lăng Trường Phong

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長豊陵

いよいよ永年の宿題であり,いったんは諦めていた長豊陵にアクセスしようと思う。既に時刻は16:30を過ぎている。今日はそれで終わりだな。

今では立派な橋が架かり,車でのアクセスが可能となった嘉隆帝廟方面だが,橋が架かるまでは浮き橋を使ってアクセスするしかなかった。その浮き橋すらなかった時は渡し船を使っていたという話も訊く。左の写真の真下には浮き橋がかかっており,そこには橋柱のようなものが残っていた。かつては吊り橋が架かっていたような痕跡だ。


この辺りを外国人がウロウロするのはとても珍しいようで,今回もまた子供からハロー攻撃を受ける。そろそろ夕食の時間ということで,煮炊きの臭いや薪を燃やす臭いがする。

浮き橋を渡りきったところで,地元の人が待ち構えていた。渡橋料を取るようだ。いくら? と訊くと,1万ドン札を見せてくれた。様子を窺っていると,地元の人からは取っていない。外国人からのみ取るということだろうか。ということは私以外にこの橋を使った人がいるということなんだろうか。結構暇な商売だな…。浮き橋とは言えメンテナンスは必要だろうから,1万ドンくらいは取ってもいいのだろう。

さて,長豊陵Lăng Trường Phongは上記地図のように嘉隆帝廟エリアのすぐ西に位置する。したがって4年前に嘉隆帝廟に訪問した際,一緒に片付けられるとタカを括っていたのだった。しかし,実際には嘉隆帝廟と長豊陵との間には越えがたい幅のある小川が流れており,嘉隆帝廟からのアクセスは不正解だった。ただ,それ以外に長豊陵へ至る道は地図をどう見たってみつからなかった。他の陵墓とは距離が離れているし,これだけのために訪問するのも効率が悪いので,長豊陵への訪問は諦めかけていたのだった。

しかしそのヒントは思いがけずやってきた。Google Mapsの衛星写真はふいにアップデートされる。衛星写真は天候や光の加減によって見え方が異なり,今回のアップデートで長豊陵へ至る,か細い道がほんのりと浮かび上がって見えたのだった。

上記地図で分かるように嘉隆帝廟からの,東からのアクセスではなく,西からのアクセスが正解のようだった。東からなら直線距離で250m程度,西からは350m程度となる。しかし衛星写真から見る限り,林の中を突き抜けていく必要がありそうだ。ひょっとすると山になっていてアップダウンも激しいかもしれない。

陵墓として存在している以上は誰かがアクセスしているはず,ということは何かしらの道が存在する,という経験則ができあがってもいるので,おそらくこのルートで正解だろうという確信がある。

この付近を3年前ほどに探索したことがあり,回りはおそらく漆の林となっている。これらが自然に整列しているとは思えないから,人の手によって植えられたのだと思う。ということは漆汁を採集したりとメンテナンスが必要なわけで,人が容易に入ることのできるルートが必ずできあがっていると思われるのだ。

行き交うベトナム人や現地で生活する人に「なんでこんなとこに外国人が来てるんだ?」とびっくりされながら,自転車を漕いでようやく長豊陵に至るであろう小径を見つけた。うん,確実にバイクが入っている。この程度の道ならば衛星写真でも見えているはずだ。


だいぶ進むとバイクの轍はほとんど消えるが,わずかに人が入っているであろう筋は見える。思った通り漆が整列しており,人の手が入っていることは間違いない。既に17時近いので,こんなところで迷っていたら,ホテルに戻る際には街灯もない道を進まなくてはならないので急がないと…。ただ,Google Mapsは確実に長豊陵に向かっていることを知らせている。


その2分後,ようやく長豊陵の尻尾を摑んだ。


入口はどこだろう…。陵墓を回ってみる。


開けた石畳が現れた。ここが正面に違いない。


Lăng Trường Phong,間違いない,長豊陵だ。祀られているのはNguyễn Phúc Thụ,つまり7代広南阮主である阮福澍だ。阮朝を樹てた初代嘉隆帝阮福映によって廟号として肅宗,諡号として寧王を追号された。


門の表にも裏にも,一切の文字資料や装飾がない。ところどころ煉瓦材が見えており,確かに当時のものが今に残っている感じだ。久々に重厚な阮朝宗室の陵墓を見た。そしてこれで阮朝皇帝ならびにそれに先立つ広南阮主の陵墓すべてを訪問したことになる。一つの達成点と言える。ベトナムでこれ以上の規模の陵墓を見ることは今後無いだろうな。


屏風の表,裏にも装飾はない。


囲みは二重になっていて,典型的な陵墓の構成になっている。中央部は中心に石版が埋まっているだけで他に構造物はない。


銘板もないが,誰かがお供えをしに来ているようだ。


陵墓から正面を見たところ。だいたい先に改段があり,さらに奥に月湖などの水場があるものだが,長豊陵はそうではない。


17時を回り,あとは日没まですぐ…。急いでホテルに戻らないと。あと10kmほどあるので,1時間くらいは自転車を漕がないとまずいぞ。

時間の都合上,他の遺跡候補は諦めようとしたが,明命帝廟を過ぎたところで,立ち寄れるものがあったので,今日はそこを最後に。

場所は明命帝廟の北東方向。地図上では道沿いの林の中に方形の空隙になっていて陵墓かと思ったが,陵墓の門柱の上に櫓のようなものはない。門柱に漢字が刻まれてはいるが,阮朝の史的陵墓ではないだろう。


階段の左右には蟠龍ではなく獅子。


碑亭のような庇の下には銘板が。漢字とクォックグーとが併記されているので怪しいが,「敕封」で始まるので,阮朝皇帝から封号を与えられた人物であることは間違いない。ただ2010年とあるのが怪しいが…。


それにしても墓自体は大きいなぁ。典型的な宗室の陵墓ではないが。


一番奥の庇の下にも銘板。たぶんこちらが元々のもので,先ほどの真新しいのは2010年に復刻したものだということか。「開墾」とあるので,貴族ではないかな。ただこの地域の有力者ではあったのだろう。


河沿いのミンマン通りを黙々と走る。行きのカイディン通りと同じルートではずっと上りになってしまいつらいので,高低差の少ないこちらで帰ることとする。

17:45。夕焼け。おそらくもう日没の時間だ。道に街頭などほとんどないので急がねば…。


基聖陵。2年前は自由に入れたのに,扉がしつらえてあった。しかも鍵が架かっていた。どんどん入れなくなるし,どんどん俗悪に復元されていく。陵墓を訪問しておいて良かったかもしれない。


もうすぐホテルというところで,ゆるい上り坂となった。最後だからと立ち漕ぎをしようとしたら,足が攣った…。運動不足だなぁ。気をつけねば。

18:03,ようやくホテルに到着。真っ暗になる前に帰って来れてよかった。ホテル前にはランタンがしつらえてあって良い感じ。


入り口からレセプションへのアプローチ。ホテルに面した道はバイクが行き来しているが,ここまで来ると気にならない。


レセプション。壁がなく開放的。


メインのレストランである「じゅんれい」。ここのブンボーフエが美味しい。


四阿。左右にヴィラが並ぶ。


西洋人はせっせとプールで泳いでいる。いっぽう私は自転車で忙しく動き回っている。せっかくリゾートに泊まっているのに貧乏症だなぁ。まぁ忙しなく動くのが性に合っているんだとも思うけど。


私の部屋はこのアプローチの先にある。


今回宿泊する部屋。


夕食はまだ。どうしようかと考えて,というか選択肢としてはホテルのレストランか,少し歩いたところにあるラトンというお店しかない。郊外過ぎて他に店がない。これ以外が良ければタクシーを呼ぶしかない。今日はラトンにしよう。

ホテルの向かいにあるのは雑貨屋。水やソフトドリンク,ビールなどの飲み物とちょっとしたスナックなどが販売されている。地元の人がひっきりなしに来るが,ホテルの泊まり客も利用する。コンビニほどではないが,郊外なのでこの店は便利に使える。


ラトンは,初めてフエに来たときにお昼ご飯を頂いた店。ツアーの行程に入っていたお店だが,3年前にドライバーに連れられて行ったときに味の良さに気づいて,また来るようになった。


私が入店する際,日本人3人と入れ替わりになった。私ひとり。まだ時間が早いからかな。

蟹ときのこのスープ。複数人数でシェアする量のようで,一人では多かった…。


蟹肉入り春雨炒めとエビの揚げ物を頂いた。無論おいしい。外国人向けのレストランなので,お代は結構なもの。


大満足でホテルに戻る。

このホテルは蚊がいっぱいいそうな環境だが,週に二度蚊を退治するための作業をしている。バルコニーに出るときは念のため虫除けを作動させていた。


「このリゾートでは自然動物を見かけることがあります。それらは優しく全く無害です。どうぞご理解ください」とある。セミ,トカゲ,カエル,ウサギはまだ分かる。だけどネコやニワトリは自然動物と言えるだろうか…。おそらく,自然動物に慣れていない外国人観光客に騒がないようにとのお願いだろう。


バスタブに湯をためて入った。夜になって気温は22度となり,エアコン要らず。花粉から逃げていられるのも嬉しい。東京では20℃を超える温暖な日だったとか。

バイクの音は聞こえないが,近所の大音量のカラオケは聞こえるのが残念だ。もっともベトナム人は早く寝るので,それほど長い時間歌っているわけではない。

三日後のフエからハノイの国内線フライトは,今日早々にアップグレードが通知された。成田からの国際線はなかなか連絡が来ず,あまつさえ空席があるというのにアップグレードされなかったのに…。どういうことなんだろうか。ともかく良しだ。ラウンジアクセスの権利も応募しているので,そちらの当落の結果を待つ。フエの空港は退屈なので実はこっちの当落のほうが気になっていたりする。

フエの史跡探し1日目。14時から開始して空振りも多かったが,阮朝の史的陵墓が3つ。何より長豊陵に行けたので大満足だ。


21時で23℃。日が暮れれば涼しい。エアコンは止めている。明日は最高でも28℃との予想。大丈夫だな。