江州巡覧 2007年7月14〜16日

米原から北へ。今度は長浜である。長浜には以前にも来たことがあるが、大通寺を見ただけでそのまま北陸へと駆けていった。

今回は、安藤家という豪商の屋敷を訪問する。付近一帯は旧城下町であり、現在は「黒壁スクエア」と呼ばれる複合観光スポットになっている。レトロを売りにしているようだ。

ただ、ガラス体験やアンティークショップ、フィギュアやオルゴールのミュージアムなど、特段に観光資源のない土地にありがちな、取ってつけたような施設が目立ち、突貫で作り上げたスポットのような印象がある。つまり、歴史のない「城下町」なのだ。過去のどこかで一度城下町としての歴史が終わってしまっており、そのあとになってから新たに作り直されたものなのである。

歴史とは連続しているのではない。それ以上過去に遡れないポイントというのがあり、地層のように全く違った特質を持つ時間帯の積み重ねなのである。例えば、どんなに老舗と呼ばれる店でも、遡っても江戸後期がいいところだ。

しかしだからといって長浜を責めているわけではない。新たに歴史を作りだすことは別に悪いことではないし、むしろさびれるままにしておくより、観光を再生しようとしている意思には賛成である。しかし願わくば、どこもかしこにもあるようなミュージアムを作るという安易な方法でなく、長浜ならではの資源で盛り上げていってほしいと思っているのだ。

さて、長浜駅から出ると土砂降り…。天候回復は見込めなさそうだ。

 
駅前通りを進んでいくと、滋賀銀行のある交差点で、奇抜な建物を発見。以前に来た時にも見ているはずだが、一番上の鉄塔には「長浜タワー」とある。また「NAGAHAMA TOWERBILL」とあり、ビルを「BILL」とミススペルしているのが、また何とも味わい深い。過去には観光資源となっていたのであろうか。

しかし、町の観光案内からもことごとく無視され尽されている点において、長浜市民のこのタワーに寄せる微妙な感情が垣間見える。おそらく東京タワーに便乗して建てられたものであろう。レストランの入った「デパート」的な建物だったのだろう。この程度の規模の建物をビルと呼ぶくらいだから、昭和中期のにおいがする。その時代においては、長浜とは、ある程度勢いのある地方都市だったのかもしれない。


さて、長浜タワーの真向かいに建つのは、開知学校。明治の各地に建てられた擬洋風建築である。こちらは立派な観光資源として、パンフレットに力強く記載されてはいるが、和洋折衷の奇抜さにおいては、長浜タワーと変わるところがないだろう。自分はこの両者の建築哲学に何らの違いを見つけることができない。

北国安藤家

さて、長浜タワー、滋賀銀行、開知学校の立つ交差点(この交差点は商業・教育の中心地であったのだろう)から北へ入るとすぐに黒壁スクエアが始まる。


その黒壁スクエアの入り口に北国安藤家はある。朝早いということもあるが、このひどい雨の中、観光客は自分一人で、受付の人も暇そうにしていた。

ちなみに「北国」と付いているのは、この安藤家が北国街道に面しているからだ。長浜を南北に貫くこの街道が、すなわち北陸道である。滋賀は京都と北陸とを結ぶ交通の要衝であったのだ。

さて、安藤家は明治に建てられた二階建て。長浜滞在は45分だが、一つ一つ見ていこう。


古翠園と呼ばれる中庭。雨に濡れて一層色鮮やかな緑と、しっとりとした雰囲気が気分を落ち着かせる。先ほどの青岸寺の庭園といい、雨の日でしかわからない魅力もあるのだということを認識した。

 
格子窓。螺鈿が施されている。


回廊を隔てて先には小蘭亭と呼ばれる離れがある。

 
非公開の離れだが、内部の写真が公開されている。天井絵などは北大路魯山人が描いたという。


北国街道に面した庭。


二階へ上がり、先ほどの古翠園を望む。


二階の虫籠窓から北国街道を。


一階に戻り、茶室のような天井の低い間を見つけた。部屋の区切り方が面白い。

急ぎ足だったが、落ち着きのある家を見られてよかった。風通しがよさそうで、これからの暑い時期には涼しげなつくりになっていると思う。なるほど、日本における家の作りかたというのは、夏を基本とすべしということなのだな…。


先ほど気になった櫓は浄琳寺のものだった。なるほど、京都の西本願寺の鼓楼でも見られるこの櫓、浄土系に典型のものだったか。拝観はどうやら受け付けていない様子。

このあと、長浜の曳山まつりで使用される山車が展示されている、曳山博物館に行く予定だったが、短い滞在時間ではもったいないので、駅のほうへもどり、慶雲館という屋敷を見ることとした。

なお、曳山の山車は、移動式の桃山建築というべきバロック建築であり、そのゴージャスな作りを一度見たいと思っている。また後ほど訪問することとしよう。


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