山陰九州四国異境巡礼 2004年2月27〜3月5日

2月27日(金)

荷造りを済ませ、風呂に入り、食事を終えると17:45。そう、今回も夜行で出発する。しかし夜行といっても、今回はこれまでとはひと味違う。
いつものバス停でバスを待つ。動きづらいといけないのでコートではなくジャケットを羽織ることにしたのだが、やっぱり寒い。でも、これから向かうところは山陰、九州。ここより暖かいところなんだ、と思い我慢。しかし九州とはいえまだ2月。本当にこの格好で大丈夫なんだろうか。 ダミー注釈

バスに乗り、日常から非日常への扉を開ける。ここから自分は旅行者となった。

列車で旅する機会が多いので、嫌でもオトクなきっぷの買い方を覚えてしまう。今回使用するのは「周遊きっぷ」の「福岡ゾーン」券。

周遊きっぷはフリーゾーンへアプローチするための「ゆき券」と、フリーゾーン内で使う「ゾーン券」、そしてゾーンから帰るための「かえり券」の三枚から成る。

制約は、出発駅とゾーン入口駅(ゾーンごとに指定されている)との間の距離が201kmであること、そしてゆき券の出発駅と、かえり券の到着駅が同一であることの二点。

うまみは、ゆき券とかえり券が普通の乗車券に対して二割引(学生なら三割引)であること、そしてゆき券とかえり券の経路は自由に選べること(さらにゆき券とかえり券の経路が違っていても構わない)。そしてゾーン内では特急の自由席に自由に乗り降り可である。

今回は、ゆき券を、岡山から日本海に突き抜け、山陰を通って福岡入りするルート、かえり券を、山陽道をそのまま東へ進むルートに設定した。往路では山陰を周り、復路では香川に立ち寄ってみることにした。

従来の自分なら、東海道を座席夜行である「ムーンライトながら」で進んでいたが、さすがにもう辛くて乗れない。眠れないのだ。眠れないと初日の行動に支障をきたす。

そこで今回は「サンライズ出雲」という寝台特急を使うことにした。下りは東京を発して岡山で日本海へ方向を変え、日本海に出て出雲市駅まで走る。だが自分は寝台を使うわけではない。寝台券は一番安くても6300円する。さらに特急券3600円程がかかるわけだから、素直にのぞみに乗った方が安い。

実は、サンライズ出雲には「ノビノビ座席」なるスペースを確保した車両がある。指定席券と特急券だけで乗れ、寝台に乗るときと比べて6000円弱ほど安い。ノビノビ座席は座席といっても椅子はなく、カーペット敷きの上に寝るという、いわゆる雑魚寝スペースである。このノビノビ座席について詳しくは後で触れることにするが、座席と比べて何よりも横になれるという点で優っている。

さらに、サンライズ出雲の特急券代を安くするために「乗り継ぎ割り引き」を利用する。

新幹線と在来線特急を乗り継ぐ場合、在来線特急の特急券が半額になる。新幹線の隣り合う駅間の特急券は830円程度だから、在来線特急の特急券が1660円以上の場合は新幹線に乗って(実は乗らなくてもいい。権利は放棄しても構わないのだ)、在来線に乗り継げば全体として安く上がる。

サンライズ出雲の場合、下りが停車する駅は東京、横浜、熱海…であるから、小田原−熱海間を新幹線で移動(新幹線自由席特急券830円)、熱海でサンライズ出雲に乗り継げばサンライズ出雲の特急券が3660円のところ半額の1830円となる。全体として2660円となり、全行程をサンライズ出雲で移動する場合と比べて1000円も安い。

こういった特例や運賃体系の性質を見極めて移動費を節約した。繰り返すが、貧乏旅行をしていると嫌でもこんなことに詳しくなってしまう。

前置きが長くなったが、最寄りの駅へバスで移動し、常磐線、東海道本線を経由して小田原までやってきた。首都圏ではちょうど帰りのラッシュにぶちあたってしまい、大船まで車内はぎちぎちだった。大船を出ると車内に余裕が生まれ、やっと椅子に座ることができた。辻堂を過ぎると車内は一気に寂しくなった。

記念すべき今回最初の写真は小田原駅の巨大提灯。小田原駅の改札の真上につるされている。小田原といえば提灯。「おさるのかごや」でも歌われているほどだ。

ここから新幹線で熱海まで向かう筈だったのだが…。自動改札にきっぷが入らない。有人改札できっぷを見せると「経路が違っていますね」とのこと。「東海道新幹線」と「東海道本線」は併走しているものの、異なる経路として扱わなくてはならず、周遊きっぷのゆき券で指定した経路は東海道本線であり、新幹線には乗れない。まぁ、小田原〜熱海なら鈍行でもそれほど時間かからないし、別にいいや。

問題なのは、この寒さ…。次の電車までの待ち時間が厳しい。

小田原では現在梅まつりをやっているらしい。小田原も何かと見どころが多い所のようだ。小田原から私鉄で一駅のところに「五百羅漢」という名前の駅がある。駅前に五百羅漢を擁するお寺があるのだ。いつか訪問してみたいと思っている。

小田原から熱海まで移動。23:00。熱海駅のホームでは石橋蓮司似のおっさんが居眠りしていた。よくこの寒さの中眠れるなぁ。自分は紙コップ自販機でココアを買って暖を取る。23:10頃、下りの普通がホームに入ってきた。おっさんはまだ寝ている。声を掛けて起こそうかと思ったが、自分と同じくサンライズ出雲の客かもしれないと思い、とどまった。余計なお世話になったらイヤだし…。電車が熱海を出た瞬間に、おっさんは目を覚ました。うろたえるおっさん。…あんたやっぱり普通の客だったんだね…。がんばれ、オヤジ!次の普通は0:30だ!ごめんね、やっぱり声かければよかったね。

23:23、サンライズ出雲が入ってきた。車両を確認し、ノビノビ座席の車両へ入る。東京を22:00に出た列車だから、既に車内は静かに、暗くなっていた。寝ている人たちを起こさないよう、番号を確認して侵入。週末ということもあり、ノビノビ座席は満席だった。

2月28日(土)

ではここでノビノビ座席について写真で詳しく説明していこう。

上写真の左側にそれぞれ指定されたカーペットスペースが存在する。通路との間はカーテンで仕切ることができる。また、二階建てであり、二階を割り当てられた人は階段で上に上がることになる。通路の左側はすぐ窓。この窓にもカーテンが取り付けられており、夜間は締められる。ちなみに、これらの写真は全て夜が明けてから(岡山を出た後に)撮ったもの。

これが一人一人に割り当てられたスペース。畳一畳くらいの幅、一畳以上の長さがあるので、寝るぶんには全く問題ない。自分は狭いところが好きなので、かえって快適である。

窓側に隣りとのしきりがあるので、頭を窓側に向けて横になればプライバシーはある程度保てる。隣りの乗客の顔が見えず、自分の顔を見られずに済むというのは、なかなか考えていると思う。今回、行きは一階、帰りは二階を指定してみた。

装備としては、暖色照明、読書灯、缶やペットボトルを置くための小さな棚、小さい布(枕カバー?でも枕は備え付けられていない)、そして毛布。自分はさらに快適に過ごすために、薄いブランケットと空気枕を持っていった。カーペットが固く、体が痛くなりあまりよく眠れたものではなかった。ただ、カーペットの下は床暖房になったおり、かなり快適である。寒くて困ることはなかった。逆に服を一枚脱いだほどである。あと、通路の窓側の壁にコンセントがあった。しかし多分掃除機の為のものと思われ、客が自由に使って良いかは判断が難しい。また使ったところで、通行客の邪魔になるだろう。通路は離合が難しいほど狭いのだ。

ちなみに、サンライズには「シャワー室」がある。寝台の客と同様にノビノビ座席の乗客も利用可だ。300円のシャワーカードを車掌から購入して6分間使うのだそうだ。今回、自分は利用しなかった(風呂入ってきたし)。

窓には自由に上下できるスライド式の目隠し(?)がある。

これはさっきの写真とは逆方向に向いて撮ったもの。窓側にあるスリットは、暖気の排出口。そして下に見えているのは自分の足。

これは大部分の客が降りた後、撮ってみたもの。それなりに個人のスペースはしっかりと確保されていることが分かる。

あまりよく眠れなかったが、疲労度は座席夜行と比べてやはり軽い。選択は正解だったようだ。眠れない時は車窓を眺めていた。車内が暗いので外がよく見えた。

静岡の浜名湖あたりでは、「オートレストラン」というネオンが見えた。帰ってきてから確認したが、やはり「ウーホー」であった。ウーホーは自動販売機だけのチェーン店。うどん、そば、ハンバーガーなど様々な特殊自動販売機が設置されている。まだ自分はウーホーを利用したことがないが、幼い頃一度食べた自動販売機のまずいハンバーガーをもう一度食べたいと最近になって思っていたので、このウーホーには、憧れに近い感情を抱いている。愛知県を中心に東海地区で展開しているとのこと。最近見つけた「山田屋」というサイトでウーホーを知った。

まだ暗いうちに京都、大阪を通過していく。5:55頃には夜明け。文字通り「サンライズ」。岡山到着前頃には車内放送が復活した。岡山ではかなりの客が降りていった。実はこのサンライズ、岡山で二つに切り離され、一つは山陰、一つは四国へ向かう。前者が「サンライズ出雲」で、後者が「サンライズ瀬戸」である。自分は勿論前者の車両に乗っている。

岡山を出ると、伯備線という自分にとって初めての路線を走ることになる。伯備線は中国山地を突き抜けている。なにぶん山がちなので、少しでも低地を走ろうと、高梁川という川沿いに通っている。

高梁川というのがこれ。なかなか雄壮な姿を見せてくれたりする。

だいぶ奥に進むとこんな感じになる。谷川といった向きがある。時々大きな岩山などが見え、かなり見応えのある区間である。たまに石灰石の採掘場などもある。すでに鳥取に入っていたらしい。

途中何回か待ち合わせの為停車した。特急が止まるって凄いな。

鳥取に近づくと、奥の方に雄大な山が見えてきた。大山である。初めて見たが、美しい。さすがに三名山の一つだけあると思う。

列車が進み、わりあい良く撮れたのがこちら。車内放送でも、大山の案内などを流していた。なかなかいいサービスだ。

ノビノビ座席にはアンケート用紙が備え付けられていた。ちなみに帰りの(上りの)サンライズにはアンケート用紙は無かった。首都圏からの乗客を狙っているようだ。備え付けのボールペンは自由に持って帰ってかまわないとのこと。記念に頂いた。

鳥取県に入ったかと思うと、すぐに島根県へ入った。快適ではあったが、結局一時間ほどの睡眠時間しか取れずに、島根県最東端の市、安来で降りた。

安来駅ではドジョウすくいが迎えてくれた。


次へ 山陰九州四国異境巡礼 トップへ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送