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近畿の古刹巡り 2008年3月16〜18日

妙蓮寺

みょうれんじ

京都市上京区寺之内通大宮東入妙蓮寺前町875

京都市営バス「堀川寺之内」下車

マピオン

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妙蓮寺

本法寺から堀川通りを挟んで西に妙蓮寺はある。本法寺も妙蓮寺も、この後訪問する立本寺も日蓮系。この辺りは日蓮系が多い。それほどの大寺ではないが、境内案内図を視れば分かるように、8つの塔頭を抱える。往時は27あったという。

ここ妙蓮寺へは、本法寺、立本寺の二寺が特別公開中というので、あくまで「ついで」レベルで立ち寄っただけなのだが、私は思いがけずとうとう京都に残る最後の「秘所」を見つけてしまうことになる。

塔頭の一つ、本妙院。ここは枯山水庭園を抱えるらしいが、残念ながら非公開。おそらく、右の垣の向こう、方丈前に広がっているはずだ。
本妙院隣の常住院。しだれ桜だろうか。繊細な庫裡前庭園を見せる。

さて、妙蓮寺の庫裡。庫裡前庭園はなんと枯山水庭園。囲いがあればもっと趣は出ると思う。日蓮系だが、臨済宗のような庫裡。

庫裡内も臨済宗のそれのようだった。煙だしが見える。

受付には誰もおらず、呼びかけると寺務員が出てきた。ちょうどお昼時で失礼したかもしれない。自分以外に拝観客はおらず、一対一で説明をしてくれた。早速通されたのが、庭園。

おもわず、「あっ!」と声を上げてしまった。素晴らしすぎる…。

寺務員さんは、個人的にもこの庭園の美しさに魅了されているらしく、寺務員さんの話を共感しつつ聴いた。「十六羅漢の庭」というそうだ。

16代日首の作だという。表書院からの眺め。写真右側の奥書院側からの眺めがおそらく、作庭者の意図したものだと思う。

 

左側中心に置かれている横長の石は、かつて伏見城にあったもので、臥牛石と呼ばれているが、ここでは涅槃時の釈迦如来を表現している。ただ、牛は悟りを暗示するものであるから、この流用はそれほど強引なものではない。その釈迦如来の周りを囲んでいる羅漢たちを、この庭園は示しているとのこと。

日首は、最後に「無墓」と書いて「はかなし」と読ませる語を置く句を、一晩で500作りあげたという。気に入った秀吉が、臥牛石を与えたとのこと。

さて、ここで寺務員はクイズを出題してきた。「十六羅漢の庭」というが、釈迦如来を示す臥牛石以外の石をカウントしてみよ、と。いくら数えても15しかない。「そう、15しかない。じゃああと一つはどこにあると思う?」と訊いてきた。禅問答・公案のようになってきた。そこで、幾分逡巡して「見えていないのではないですか?」と言ってみると、「そう、『ここからでは』みえない」と寺務員は思った通りの返答。…ひらめいた!「自分ですか?」と答えると、果たして正解だった。「視ている自分自身が16番目の羅漢ということを示しているのです」と寺務員は答えた。

「『ここからでは』みえない」という寺務員の言葉が最大のヒントだった。いつだって見えないのは「自分」なのだ。ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』に拠ると、自己は世界の果てなのだ。つまり、自分は自分を視ることができない。自分の視角が世界の「ふち」なら、見えないのは、その視角を形成している自己である。

先ほど観た本法寺の「十の庭」も、自分が10個目の石だった。この手の仕掛けは日蓮系に典型のものなのか?面白かった。

さて、この庭園、観た人だれもが驚嘆するという。京都のどの寺も見尽くし、タクシーの運転手にどこかないですか?と訊いてここに案内された人の話もしてくれた。自分自身も去年は5度も京都に来るほどの京都好きで、寺はある程度見尽くした感があるが、同様に驚いたことを伝えた。妙蓮寺は京都通が最後に行き着く「秘所」だった。

今はちょうどお昼時なので、影となる部分が少なくて一番の見頃だという。ただし、秋から冬の夕方も陰影が深くなり、砂紋の凹凸がくっきり見えるので、その時期もオススメだという。時間帯によって様々に表情を変えるので、一日中観ていても飽きないんだとか。この後特別公開の寺を控えていなければ、もう少し時間をかけて観ていたいくらいだ。

奥書院からの眺め。寺務員もここに務めるまで、この界隈をいつも原付で往復していたにもかかわらず、この庭園の存在を知らなかったという。

最後にもう一枚。素晴らしい。

禅問答のような謎といい、雰囲気は絶対に禅寺なんだが…。

予約制で見せるという、奥書院内の等白の四季の襖絵。

奥書院と庫裡の間に囲まれた箱庭。

表書院にあった不思議な像。羅漢だろうか?腰巻きが面白い。

最後に思い切って寺務員に訊いてみた。「こちらのお寺は、なんだか禅宗みたいですね」というと、やっぱり困った表情で返してきた。日蓮系であるから、他宗に似ている、などと言われて名誉なこととは思わないだろう。ただ、「確かに似ているかもしれませんね。清潔である、ということであればそれは嬉しいお言葉です」とのこと。特に元々禅宗で、後から改宗したとかの話はないようだった。

この辺りに日蓮系の寺院が多いのはなぜかと訊くと、豊臣秀吉が他宗に対抗するため、日蓮系の寺院をわざわざ集めたとのこと。

妙蓮寺の門の影に隠れてたくさんのタヌキ像が置かれていた。中でも面白かったのが、このデュエットタヌキ。

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