次は法華寺。海龍王寺を出てすぐ。


法華寺の通用門には、鬼瓦の他に兜のようなものも乗っていた。夏に訪問したときには気が付かなかった。

法華寺も、夏には本堂にも入らずに退散してしまったところ。

法華寺には既にバスツアー参加客が居た。落ち着いて拝観できるかちょっと怪しくなってきた。入り口で本堂拝観+宝物館の拝観料を支払う。さらに+庭園用の拝観料もあった。

本堂では30人ほどの客が座っており、既に尼僧による説明が始まっていた。もう一人の尼僧は壇の前で経をあげていた。法華寺は尼寺なのだ。自分もその片隅に陣取る。

一通り説明が終わった後、バスツアー客はみやげもの売り場に寄って集ってお守りや観音像の写真などの法華寺グッズを買い求めはじめた。しかも先ほどまで説明していた尼僧が売り子になっていたので、これでは新興宗教ないしは健康食品セミナーなどと少しも変わりがなく、呆れてしまった。

前より疑問に思っていたことがあったので質問したかったが、尼僧の商売が終わるまでしばし待つしかない(商売を中断してまで金にもならない質問の対応をするとは思えない)。その間に堂内を観よう。

受付・みやげもの売り場の後ろ、すなわち本堂の外陣西部分には、ヴィマラキールティ(左)と地蔵菩薩(右)が居た。このコンビは異色だが、おそらく何のコンセプトもないまま同居させているのだと思う。ヴィマラキールティは完全には胡座をかいていない。右足を崩している。

 
翻って本堂の外陣東部分には、マンジュシュリー(左)+十一面観音(右)の色黒コンビが。マンジュシュリーの光背には八字の梵字が書かれていたので、八字文殊なのだろう。マンジュシュリーの乗る獅子はお世辞にも優れたものとはいえないが(巻き髪が首の回りにある)、狛犬のようで愛嬌たっぷりだ。口の付け根にネコのような髭が生えていた。ここの十一面観音は、見たところ秘仏となっている十一面観音のかなりお粗末な複製というべきものだ。

ちなみに、西部分のヴィマラキールティと東部分のマンジュシュリーが対面しているのが面白い。維摩経における両者の問答を象徴しているのかもしれない。とすれば、見かけ上の相方となっている地蔵菩薩と十一面観音(お粗末ヴァージョン)は、それぞれ元々は他の堂宇に安置されていたものだろう。

あらためて秘仏の十一面観音を観てみよう。やっぱり思っていたよりずっと小さい。尼僧によれば秘仏の十一面観音像は、光明皇后に似せて作ってあるのだとか。しかし観たところ口の周りには髭がある。両足の向いている先がそれぞれ微妙に違うが、池を渡っている途中に立ち止まった一瞬だからなのだという。

堂内中央の壇には、二つの大きな厨子が並んで乗っており、その向かって左側の厨子に秘仏の十一面観音が入っている。さらにその四方に四天王が立っていた。一方右側の厨子は閉ざされている(こちらには四天王が居ない)。この寺にはさらに秘仏があるのだろうか。いずれかのサイトで「法華寺には四本の腕を持つ不動明王像があるが、いつ公開されているかは不明」という記述を見たことがある。ひょっとするとその変わり不動明王が右の厨子内に入っているのかもしれない。ただ、観音像と対等に並んで不動明王を安置するやり方には疑問が残る。

そうこうしているうちにバスツアー客が居なくなったので、尼僧に質問を。以前より気になっていたのは、十一面観音が持つ衣の先が、何故不自然に上に持ち上がっているのかということ。しかし尼僧にとっても意外なことだったらしく、結局分からずじまい。

本堂を出て、境内西にある慈光殿(宝物館)に侵入。幾人かのツアー客も居た。


慈光殿に入ってすぐにあった四本の腕を持つ不動明王。なかなか珍しい。不動明王の後ろの炎はカルラ(ガルーダ)炎というのだが、この像の場合は炎の先に鳥のくちばしのようなカールがあり、よりガルーダの炎であることを強調している点で珍しい。

 
鬼瓦の展示もあった。左は巻き髪の表現があり、しかも鳥のようなくちばしがある。一方右は髪がなく、しかもくちばしではなく普通の口となっていた。

慈光殿を出たところで再び疑問が。本堂の閉ざされた厨子内には四本腕の不動明王が安置されていると思っていたが、そうではなかった。それでは、その厨子の中には一体何が安置されているのだろうか?再び尼僧に質問をしなくては。本堂拝観券は既に無くなっているが、半券を見せればOKしてくれるだろうと、再び本堂へ。

本堂内ではツアー客向けの説明が始まっていた。尼僧に訊くどころではない。みやげもの売り場の寺務員に半券を見せようとごそごそしていると「結構ですよ」と言われた。この寺務員に訊いてしまおう。曰く「同じ観音さんがいます」とのこと。つまり、レプリカである。普段はレプリカの方の厨子が公開されていて、秘仏開帳の時には閉ざされ、真の観音像が公開されるという仕組みだった。そうか、だから影武者の方には四天王が並んでいないのだな。

世界各地のディズニーランドにおいては、ミッキーマウスが複数存在することのないよう登場時間を定めているのだとか。それと同じように、ここ法華寺でも本物と影武者が同居することのないようなスケジュールが組まれている。つまり、現在閉ざされている方の厨子の中には観音像は「存在していない」ということになる。人が観察できない以上、そこに何者かの存在を認めることができない。誰もいない森の中で木の枝が折れたとしても、誰も見ていなければ「枝が折れた」とは言えないのだ。


これはから風呂。風呂といっても浴槽はなく蒸し風呂。人が蒸気が充満する木箱の中に入る仕組みになっている。男女別の入り口があるのだという。内部は現在非公開となっているが、本堂内に展示されているいくつかの白黒写真で、中の様子を窺うことができる。

法華寺を出ると、駐車場から一台のバスが出て行った。自分と一緒に本堂で説明を聞いていた団体さん達だろう。

この後バスで大和西大寺駅へ。まだ10:00だ。このまま奈良に留まり宝山寺や朝護孫子寺、当麻寺などへと足を伸ばすか、それとも京都へ行って前々から行きたかった三尾へ紅葉を見に行くか。京都には他にもこの時期限定の特別公開物件があるので、思い切って京都に出てしまおう。初日の出発が遅れたせいで、予定を大幅に変更せざるをえなくなった。

結局、奈良では特別公開を実施していた興福寺、海龍王寺、法華寺の三寺で終了。また来るさ。

西大寺からは特急で京都へ。


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