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京都'08秋の特別公開その2 2008年11月23日

妙心寺塔頭大法院

みょうしんじたっちゅう だいほういん

京都府京都市右京区花園妙心寺町64

JR山陰本線花園駅下車、あるいは京都市営バス・京都バス妙心寺前バス停下車、あるいは京福電鉄北野線妙心寺駅下車、あるいは京都市営バス・京都バス妙心寺北門前下車

マピオン

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妙心寺塔頭大法院

予告通り、11月の末の今日、二回目の特別公開に参加するため、京都に向かう。

今回もJR東海ツアーズの「京都1dayプラン」を利用する。しばらくは日帰りの旅を続けることになるかもしれない。

今回は前回と違って紅葉のシーズンを迎えているはず。それも楽しみだ。

行きの新幹線からみえた富士山。綺麗に見えた。既に雪が積もっている。

 

京都駅からは嵯峨野線(山陰本線)で花園駅へ移動。まずは妙心寺の塔頭を観る。

左は妙心寺境内南西にある勅使門。じっくり観たのは今回が初めてかもしれない。右は妙心寺の「表玄関」である南門。早朝だからかどちらの門にも鳩がたくさん止まっている。

左は勅使門の先にある妙心寺の放生池。そしてその先には右のように三門、仏殿、法堂が一直線に並んでいる。写真では切れてしまっているが、さらにその先には大方丈(さらに小方丈)、大庫裡と続く。この辺りが妙心寺の中心部分だ。

三門のすぐ東には浴室が。非公開だが、おそらく相国寺などと同様に蒸し風呂になっているはずだ。

こんな構えの銭湯作ったら流行らないかな…。唐破風が格好良すぎる。

三門を観察。三門の裏側は柱で支えられていて、張りぼてのような印象。右は二層目と一層目の間にある謎の面を捉えたもの。妙心寺に立ち寄れば必ず観るのだが、鬼でもないし、邪鬼でもない。何なんだろうこいつは。

仏殿。内部写真はいつか撮ったはず。右は妙心寺のウェブサイトの背景にもなっている破風部分。上に載っている鬼瓦の迫力が半端無い。典型的な禅宗様だ。

法堂(左)と輪蔵(右)。どちらも重厚な造りになっている。

さて、今回第一番目の訪問先、大法院に向かう。左はたぶん聖沢院。右は霊雲院。どちらも非公開塔頭だ。綺麗に色づきはじめている。

こちらは大龍院のカエデ。燃えるような色だ。あまりにも見事だ。

今回最初に訪れるのは、妙心寺境内最も西に位置する塔頭である大法院。これまで存在すら知らなかったが、毎年紅葉の季節と新緑の季節に、独自に特別公開を行っているらしい。

門をくぐると、すぐに右に90度折れ曲がり、それから一直線に参道が延びている。

参道右手には四阿がある(左写真の奥)。手前には…牡丹(たぶん)が綺麗なピンク色に咲いていた。地面に落ちた花びらがよい。

いっぽう参道左手には垣がしつらえてあり(右写真)、おそらくその先は庭園となっているものと思われる。この後堪能できるはずだ。ここにも真っ赤なカエデ。期待できる。

参道を抜け、玄関より庫裡へ入る。

今回も図面をおこした。縮尺は例によっていい加減…ということもない。実はwebの航空写真をトレース元にしているからだ。ただし、建物の中は透けて見えないし、屋根は建物が地面に接している面積よりも大きいので、正しいかといえばそうでもない。建物より大きな樹木などがあれば、隠れてしまってよく分からない部分もある。やっぱり現地に行って観てこなければ詳しい構造は分からないものだ。

玄関から入って左手にすぐに見えるのが上のような坪庭。坪庭マニアにはたまらない。まさに小宇宙だ。奥の障子戸がはまっている所は茶室。

左写真は玄関側から。右写真は方丈側から。方丈側からのアングルがいいかな。方丈の軒や坪庭に生える二三の細竹が涼しげで、夏場に来たらもっと良いかもしれない。

すっかりこの坪庭を気に入ってしまい、ばしばし撮ってしまった。

「有隣軒」という名の茶室の中。土壁の色が特徴的だ。

掲示によれば、『論語』の「徳不孤必有隣」から取られているという。「徳あらば孤ならず、必ずや隣有り」とでも読むのだろうか、要するに徳のある人は孤立しない、ということだろう。ひいては、人は必ず他者を必要とするということ、他者の存在によって人は存在しうる、ということを意味しているかと思う。ちなみに大型書店の有隣堂はこの言葉から取られているとか。

庫裡の奥の部屋。襖絵として「叭叭鳥」が描かれている。梅の老木に群がっている様。土方稲領によるものという。

解説によれば、叭叭鳥とは中国の鳥で、牧谿の絵によって日本で知るところとなったという。京都市動物園に飼育されているとか。

「叭叭鳥」の解説として、「鴉に似た嘴の許(もと)に飾毛のある鳥で説に依れば人語をものす、というから九官鳥の様なものかも知れぬ。」とある。この夏、東京国立博物館で永徳の「松に叭叭鳥・柳に白鷺屏風図」で既に見ていた。

まず「叭叭鳥」というその特徴的な名前が気になる。「叭」という字は手元の辞典に無いが、その示すところは何となく分かる。口偏が付いている漢字の半分は、だいたい意味は無く音だけを写している。 おそらくその鳥の鳴き声を指しているかと思う。 現代中国語音では「パーパー」となるが、おそらく日本語でカラスの鳴き声として表現される「カァカァ」に相当するのではないか。解説でもカラスに似ていると言っているし、実際黒い。

正体不明のこの鳥、今度京都市動物園で観てみたいと思う。

さて、ではなぜこの鳥が襖絵として描かれているかといえば、禅語「長空鳥任飛」を表現しているのだという。「飛ぶにまかせる」。出典は不明だが、その意味するところは、融通無碍、自由自在だろう。

ところで額に書いてある「大院」という文字列、何だろうと思っていたが、帰ってきて調べてみると、は「法」の古字なのだという。麻垂の部分が省略されたのが「法」なのだ。つまり「大法院」であり、この塔頭の名を示している。「法」は「きまり、のり」を示すものだが、意味を示すはずの旁が「いく、さる」を示す「去」。このようにちぐはぐになっていて、字の意味が遡及できないのは元々の文字が省略されているからだ。

なお、が「法」という字になった時に省略された部分(麻垂の部分)は、神獣(チ)のこと。または解(カイチ)。は鹿に似た(一説には牛、あるいは羊、麒麟にも似ているという)一角の草食動物で(薦という草を食べる。に草冠を付けたのが薦。)、善悪の白黒をはっきりさせる聖断の能力を持ち、古代中国の裁判で用いられたという。つまり、被疑者にふれると罪のあるなしを明示することができた。理のない人間を角で突き刺すという。そのと、高低のめやすをはかる水平・法則を表す水(さんずい)、そして悪を追い払う意味を示す「去」を組み合わせたのがで、裁判の公平を意味する。こうして古字に戻れば意味がはっきりする。面白い。

この「大法院」という名は、真田信之の法名だという。ここ大法院はその孫長姫が信之の菩提寺として創建した。そもそも京都の禅寺の塔頭は、その寺を庇護する武士の出張所のようなもの。だいたいの塔頭は武士の菩提寺として機能していた。

襖絵だけでなく、障子戸の下の部分にも描かれている。こんなところまで…。それぞれつがいになっているが、左右の描かれ方が違う。左のつがいは一匹の虫を二羽で競って追いかけている。いっぽう右のつがいは二羽同士が見つめ合っている。対照的だ。

じらしてしまったが、いよいよ方丈。

方丈南側から観た庭園。

色とりどりの世界が広がっている…。素晴らしすぎる…。こんな京都は初めて観たかもしれない…。

茶室への道を露地というが、この庭園は露地を兼ねている。苔庭には飛び石が置かれていて、茶室への動線を作っている。

さて、ここ大法院では抹茶が頂ける。拝観料は600円と高めだが抹茶付き。他の寺院で抹茶を頂くには、拝観料の他に500円を取ったりするから、この拝観料は格安というほかない。

抹茶に付くお茶請け菓子は、だいたいひたすらに甘いだけであまり美味しくないのが多いのだが、ここ大法院のそれは全く違っていた。羊羹に栗が載っているもの。甘さも抑えてあり、菓子によって抹茶の味がごまかされることもない。とびきりの風景を見ながらの抹茶…。贅沢すぎる。

角度を変えて。左は方丈東端から。右は玄関から。この詩仙堂にも通じる開放的な感じがいい。

方丈の内部。付け書院の先の手水鉢が覗けるのがいい。空間認知という観点から言うと、部屋にいながらにして外の世界を取り込むことができる仕掛けになっているのだろう。

奥には違い棚などあり、思いっきり書院造りの風だ。

これが方丈内から見えていた手水鉢。上からつるされているものも風情があって良い。こちらは方丈西端からの庭園の眺めだが、こちらにも飛び石が設置されている。一体どういう動線なのだろうか。

掲示によれば、露地とは飛び石、延段、垣、門、灯籠、蹲(手水鉢)などで構成されるのだという。一般的な枯山水、池泉庭園は鑑賞するためのものだが、露地庭園だけは実用も兼ねている。それゆえに独特なのだろう。再び掲示によれば「外露地、中露地、内露地の三段構成でまとめられ、客になった場合使用の段階で妙味を楽しむ」とある。もっと勉強せねば…。

それにしてもこの塔頭の掲示はなかなか勉強になる。

再び方丈から眺めた露地庭園。この切り取られ方がいい。

さて、もう大法院を出よう。良かった。

壁から飛び出ている花。名前は分からないが、かなり背の高い花だ。それにしても綺麗だ。

通玄院の墓地に生えている。

皇帝ダリアだろうか。ダリアってこんなに背が高かったか? それにこんな花弁してたか?(09.06.06.追記)

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