更新履歴

南両毛巡礼 2008年5月24日

磯山弁財天・出流原弁財天

いそやまべんざいてん・いずるはらべんざいてん

栃木県佐野市出流原町1262

JR・東武鉄道佐野駅から車で25分

マピオン

pre / top / next

磯山弁財天・出流原弁財天

茂林寺から20分ほど北上、栃木県に入った。群馬、栃木、茨城、埼玉が近接している地域なので、少し車を走らせればすぐに県境を越えることになる。

佐野市の出流原という土地にある弁財天に向かう。その地名からしてまさに弁天の地。

ここには磯山弁財天と出流原弁財天の二つあるが、まずはダイナミックなルックスを持つ磯山弁財天から。

見よ、この勇姿を! ここ磯山弁財天は、このサイトを始めたときからずっと訪問したいと思っていたところ。念願が叶って嬉しい。他の様々なサイトで紹介しつくされている物件ではあるが、私なりのレポートを加えていく。

他のいわゆる珍スポット系を紹介するサイトを最近はほとんど見ていないため、影響されずに書けるとは思うが、中には被ってしまう部分もあるかもしれない。しかしそれは偶然の一致によるものと思って頂きたい。

上の画像二点は麓から見上げたもの。手前には京都の由岐神社でも見たような門。普通、門は階段を上りきった平らな部分に設けるものだが、これは階段の途中に建てられている。右はその奥に立つ弁天堂本体。上の画像では確認しずらいが、掛け造りになっている。とにかく朱塗りがいい。

まずは手前の門。太鼓橋が架かっているのが特徴。さざえ堂や掛け造りなど、トリッキーな建築物にはだいたい太鼓橋が架かっている。どうしてこの門に太鼓橋が架かっているのか全く分からないが、この後の展開を暗示するものだ。

ぼんぼりがつり下げられているのも、よく分からない。何か祭をやっているような感じもない。

なお、門の中央に架けられている額には「辨??」とある。「??」の二文字がどうしても読めない…。

弁財天ということで、至るところに白蛇のオブジェが配置されている。左は山口県岩国市の白蛇神社の絵馬。なお、岩国には白蛇が生息しており、天然記念物に指定されている。

ちなみに弁財天信仰は、仏教とも神道とも言い難い。この磯山弁才天も寺院なのか神社なのかよく分からない。

元はサラスヴァティというインドの音楽・水の女神だが、後に仏教に取り入れられた。日本においては、勿論仏教の神としても信仰されてはいるが、単体ではだいたい七福神という枠組みにおいて信仰されている。弁財、弁才という字面より、財や才能(おもに芸能)をもたらす神としての側面を持つようになったのである。

ただ、これだけでは白蛇との繋がりがよく分からず、説明不足だ。サラスヴァティはジャッカルに乗っているかたちで描かれるが、中国や日本に伝わる際、ジャッカルが生息していないため、見た目が似ているキツネに置き換えられた。その一方、日本にはウカノミタマ(宇迦之御魂神)という神道の神がいた。ウカノミタマは白蛇の身体を持ち、長い白髭をたくわえる翁面として描かれる水の神である。水を司る性格から稲作の神としての側面も持ち、稲荷神とも言われ、その眷属としてキツネがいる。秋になると山から下りてくるキツネが実りを告げる存在として扱われたのである。

サラスヴァティとウカノミタマがそれぞれ持つ、水、キツネという要素から、この二神が同一視され、弁財天という信仰が生まれたのである。というわけで、弁財天を祀る施設に白蛇がいるのである。

手水場。蛇の彫り物が水を吐き出している。水と蛇はその流れるような特徴から親和性が強く、しかもどちらも弁財天の属性を示している。

「銭洗い弁天」としての信仰もある。鎌倉にもあるが、持っている金を水で洗うと、財が増えるという信仰だ。水神としての弁財天、財神としての弁財天が合体している。洞穴に安置されている石には白蛇の模様が彫られている。

なお、洞穴も弁財天と親和性が強い。洞窟の形成に水が大きく関わっているし、セクシャルな意味での関連も認められる。

阿吽の大蛇だという。本堂の裏側にある。阿形と吽形の対の白蛇。狛犬ならぬ狛蛇。

階段を上り詰めると、弁天堂が現れる。見事な掛け造りだ。しかも二層構造になっている。

さて、堂内を見ていこう。左画像は本堂入ってすぐの様子。

わずか二段という中途半端な階段をわざわざ設置しているのがほほえましい。扉の中には本尊が祀られている。

しかし、もっと気になるのは、その隣りの「出口」と書かれた出入り口である。堂内に入ってすぐに「出口」というのも面白いが、実はこれは上階との連絡通路なのである。対称性を考えれば、入り口はこの反対側にあるはずだ。

弁天堂からは周りが広く見渡せる。池が点在している。これが「弁天の地」に選ばれた所以だろうか。

弁天堂一階中央に安置されている、おそらく本尊。桃山風のきらびやかな厨子が。多分中には弁天像が安置されているに違いない。額には「磯山宮」とある。

一回りして、入り口に到着。かなり急な階段を上って二階に行く。

左は二階に向かって撮ったショット。一方、右は下の階層を撮ったショット。掛け造り部分のメンテナンス用の階段だろうか。ちなみに下への階段は、落下防止のためか、二、三枚の板によってふさがれていたが、簡単に取り外せるようになっていた。

ちょっと怖いので階段を下らなかったが、お堂を出て、下の掛け造り部分を横から観察した。

ふすまのようなものが置いてある。人が上を歩くように床が作られているわけではないようだ。

最上層の二階。足場が狭いし、欄干も低いため、バランスを崩したら危ない…。冷や汗をかきながら一周した。

二階中央、堂内には白蛇翁面のウカノミタマが祀られていた。一階に弁財天、二階にウカノミタマという、神仏ハイブリッド構造になっているようだ。

ただし、二階のウカノミタマが安置されている場所は火頭窓になっており、仏式を思わせる。しかも両サイドには何かを安置するようなスペースが確保されており、空席になっているのも怪しい。元々はここに脇侍を備えた仏像が安置されていたのかもしれない。

経緯をいろいろと想像させる興味深い造りだ。

なお、二階中央部にアクセスするには、一階に降りる階段のあたりにある窮屈な出入り口を利用するようだ。体をかなり屈める必要があるし、ヘタをすると落下しかねない。かなりアクロバティックな造りになっている。

ところで、一階と二階を結ぶ階段はかなり狭い。

左画像は、二階から一階への階段を撮ったもの。左の板間は、二階の外観部分、右上のカーペット部分は二階中央堂内部分。

ちょっと無茶をしてウカノミタマを激写。正面からは見えなかったが、ダルマが置かれていた。

ちなみに弁天堂の一階の背後は、通路になっている。背後には剥きだしの岩盤。その中に、大きなすきまを発見した。近づくと冷気が出ているのが分かる。ということは、かなり深いということだ。ちょっと危険。

この裂け目は弁財天のセクシャルな側面をシンボライズしたものだろうか。裏本尊というべきか、ご神体というべきか。神仏混淆はどう言ったらいいのかよく分からない。

さて、駐車場近くにもこんな白ヘビのオブジェが。すっかり干上がっているが、ここにはかつて水がたまっていたような名残がある。

これが出流原弁天池。かなり透明度が高い。ひっきりなしに水が湧いているのだという。上の磯山弁財天に訪れる人はあまりいなかったが、ここには家族連れなども来ていた。

コイを撮ろうとすると逃げてしまう。左は橋の下に避難しているコイたちを無理矢理に撮ったもの。

えさでつる方法もあるが、水が綺麗すぎるので、躊躇してしまう。

左は出流原弁天を祀る堂宇。磯山弁財天と同様、やっぱり神社なのか寺院なのかよく分からないスタイルをしている。

こういうスタイルの信仰装置が残っているということは、はっきりさせないほうがいろいろと都合が良かったということなのかもしれない。

pre / top / next


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送