平泉・水沢巡覧 2005年1月9〜10日

冬ならばやはり温泉、可能なら雪見風呂、ということで東北の温泉旅行を計画。当初は情緒豊かで、木造四階建ての旅館のある山形の銀山温泉へ。と思っていたら、目当ての旅館が既に満室。

計画を翻して、平泉とした。さしたる見所もないが(自分が義経目当てで行くわけがない)、パンフレットの記事によれば何より温泉(しかも露天アリ)、食事の美味しそうな旅館ということで決定した。

今回もJRのフリープランを利用。新幹線往復、宿代、猊鼻渓川下りのオプショナルプランを付けて三万を切る。

相方とは上野で合流。既にして寒い。

駅弁を購入、乗車。これも旅の楽しみだ。自分は深川めし、相方は色とりどりのかやくご飯が入ったいなり寿司。

埼玉を北上中、富士山が奇麗にみえた。

宇都宮付近では、雪がうっすらと積もっていた。大晦日に降った雪だろうか。栃木県南部で、東京との温度差、気候の違いが如実に表れている。

JR東日本の新幹線に備え付けのトランヴェールも、やはり義経を推している。

郡山では細かい雪が降っていた。岩手はもっと凄いのだろうか。

仙台を抜けて三つ目、一ノ関で下車。寒い…。駅舎内も冷たい風が吹き荒れる…。あと20分ほど後に、東北本線から枝分かれし、気仙沼方面にのびる大船渡線に乗り、猊鼻渓に向かうのだが、その20分さえ駅舎内で待つのは辛い。とりあえず駅を出て、駅前の様子をうかがう。

実は今回のフリープラン、行きと帰りに、JRのほうが指定した新幹線に乗ればプラン料金が1500円ずつ安くなるというので、往復とも指定列車を利用することにしたが、帰りの新幹線は20:00過ぎ。割引につられて指定してしまったが、その時間までどこに居ればいいというのか。駅舎内でさえ寒いのだ。

事前に駅前にマックがあるかどうかを調べていたが、見事にナッシング。国道沿いにしか無いようだ。マックは無くとも、何かあるだろうと思っていた。しかし、今駅を出て見ても…。何も無いのだ。新幹線駅なのだから、という甘い考えはここでは通じなかった。今後もこのような状況に何度も出くわすことになる。地方では車が足になっていて、駅前が発達することが無いのだ。大幹線である東北本線も一時間に一本だし、市民の足とはなり得ない。利用が無いから本数が少ないのか、本数が少ないから利用が無いのか…。これでは駅前が廃れる一方だ。多分駅を核として街が発達することは見込めないだろう。

とりあえず駅前のバスセンターで明日使う岩手県交通バスの一日フリーパスを購入。600円で乗り放題。この値段で乗り放題なのだからオトクだ。バスセンター内は程よく暖房が効いていた。明日どうしても時間をつぶす場所が見つからなかったら、ここで過ごすことにしようか…?

とりあえず大船渡線の出発時刻になったので乗車。二両のワンマンカー。スーパードラゴンという名の快速列車で猊鼻渓へ。

猊鼻渓駅で降車。自分たち以外にも、旅行プランの利用者が降りるものだと思っていたが、見事に他には居なかった。

猊鼻渓

今回利用した猊鼻渓川下りプランは、昼食付き。パンフレットには素っ気なく「お弁当」としか書いてなかったので、あまり期待してはいけない。

寂しい雰囲気の駅を出ると、出迎えの車が一台。少し先の船乗り場へ。

ビニル製の屋根が取り付けられた船に乗り込む。こたつつきなのは嬉しい。自分たちは弁当。他の乗客は全て鍋、天ぷらのついた定食…。ただ、弁当の箱を開けたとたん白い湯気が出たので、素直に嬉しかった。おかずも全て手作りで美味しかったし。これほどおいしいお弁当は最近食べていなかったんじゃないかな。

食事をしつつ、船頭の案内を聞く。猊鼻渓のいわれや岩肌などを解説してくれるのだが、肝心の景色が、あまり良く見えない。寒さをしのぐためのビニル製の屋根が透明でないのと、ついている窓ガラスも奇麗ではないので視界が不良なのだ。しかも鍋の湯気でどんどんガラスが曇っていく。船頭から渡された布巾で窓を拭きつつ、良く見たいときは窓をあけてのぞくしかない。

 
猊鼻渓は石灰質の岩に囲まれた渓流。流れはきわめて緩やかで、かなり浅い。水も透き通っていて、底が奇麗に見える。船頭に拠れば、ここで砂鉄が取れ、有名な南部鉄器の原料になったとか。魚も居るそうだが、冬季は深みに居て見える範囲には出てこないようだ。ちょっと残念。


毘沙門窟。意外な物件があったぞ。ただ、上陸は無し。


さて、食事が済んだところで船は着岸。ここから先は底が浅すぎて船では進めないので、歩くのだという。雪はにわかに降り出し、風も強くなってきた…。寒いよ…。

シーズン中は軽食などを売っていると思われる施設やトイレがあったが、前者は閉鎖中、後者は水が凍って使用不可。冬場こそここでおでんとかを売ったらいいのに。

 
さらに解説は続く。岩肌に現れたでっぱり、これが「猊鼻渓」の由来だという。ライオンの鼻、なのだそうだが、自分は良く分からない…。長年に亘って垂れ続けた雫によって形成された石筍か。


そしてこちらにはイノシシがいる。くぼみが目。口を開けている。これは分かりやすい。「イノシシの「目」に、石を投げ入れると願いごとがかなう」と、船頭はいくつか専用の石が入ったかごを100円で売り出した。


少し先はもう岩が無くなっている。


もう岩の壁です。下にある小さな点、これが人間。どれだけ岩が大きいか分かりますね?これだけ川の水が削っていったのだから凄いね。一体どのくらいの年月がかかったのだろう。ちなみに岸のほうではイノシシの目に石を投げている最中。

そして帰りの船中では船頭が「猊鼻追分」という船歌を唄った。「あんまりうまくないですけど」と謙遜していたが、かなりうまかった。それでも歌うのはあまり好きではないらしく「これが無かったら結構楽な商売なんですけどね…」なんてことを言っていた。

ちなみに船にはモーターは着いておらず、しゃべり専門の船頭とは別の船頭が棒で押している。

着岸後、待機していた車で乗船所を離れる。実はこの後、駅ではなく、バスで別のところへ向かう予定。駅までしか送ってくれないかな?と思っていたが、相談したところ、バス事務所まで送ってくれることになった。親切な方だなぁ…。

東磐バスの事務所は思っていたより駅の近くにあった。バスが出るまで暖かい待合室で待たせてくれるとのこと。つくづく親切な人が多い。待合室では運転手たちが休憩中。弁当を食べたり、いすに横になっていたり…。客(我々)が居るというのに、奔放な方々だ…。乗車予定のバスの運転手が、声をかけてきた。わざわざ東京から来て、辺鄙なところへ向かうバスに乗る、というのが不思議でならないらしい。聞けばまだ中尊寺には行っていないというのだから…!

掛け造りのお堂がある小さなお寺に向かいたいのだが、一日に三本というバスを利用しなくてはならず、しかもまた戻ってくるには、到着後5分で折り返してやってくる同じバスを利用するしかない。それを逃すと、3時間半も後で、しかもそれが最終便なのだ。そんなバスを利用する奇特な客なのだから、運転手が興味を持つのは仕方がない。その上この不思議な客は事前にダイヤを知り尽くして居るというのだから、かなり驚いている筈だ。観福寺に行くことを告げると、運転手はどうにか納得したようで(というより無理に自分を納得させたのかもしれない)、それ以上は聞かなくなった。しかし観福寺はお世辞にもおよそ観光客が行くようなメジャーなお寺ではない…。

ちなみにここに限らず、岩手県内のバス・電車などの公共交通の本数は、泣けるほど少ない。だが何とか乗り継ぎの良い便を選び、可能なかぎり効率良く回れるよう下調べがついている。

バスが出るまで30分。室内のテレビを見て過ごす。新婚さんいらっしゃいとアタック25。日曜の昼下がりの黄金パターンだ。

テレビにつっこみを入れていると時間が経つのは早い。運転手と一緒に待合室を出て乗車。当然我々以外に乗車する人は無い。地方の交通はこうでなきゃ。ちなみに回数券なるオトクで便利なシロモノなんてのは無かった。

バスが発車した後、再び運転手の疑問が飛び出した。「お寺をまわってるの…?」「…義経関連のお寺だから?」「…曹洞宗だから、ということはない?」「中尊寺はいつ行くの?」と、やはり観福寺に行く理由が分からないらしい。「建築が見たいんですよ」となるべく理解しやすい理由を告げると、少し納得して貰えたようだ。しかし、しかし滞在時間はたったの5分…!自分でも冷静に考えれば理解不可能だ。この運転手のおかげで自分の行動を客観視できるのだから、感謝しなくてはいけない。

途中一人のおばあさんが乗車。そして途中で下車。


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