食堂で朝食を摂り(マトモな朝食は久しぶりだ)、チェックアウト。送迎バスに揺られて中尊寺へ。
といってもここで中尊寺を観るわけではなく、水沢行きのバスに乗るため。今日の午前中は水沢で過ごす。午後は…特に定まっていない。昨日から心配していたことだが、寒く、さらに時間をつぶすようなところも特に無いというこのロケーションの中、帰りの新幹線が出る20:00までどこでどう過ごすのか。
中尊寺前のバス停でしばし待機。つらい。今日の最高気温は1℃。1℃である。別に今日だけが特別寒いわけではない。連日こうだ。この時期は東京の最低気温が岩手の最高気温に相当する。
やっと来たバスはほどよく暖房が効いていて、凍り付いていた体が氷解していくようだった。眠い…。今日は岩手県交通バスの一日フリーパスで乗り放題である。バスに乗ってしまえば暖かい。20:00までバスを乗りまくるという手(かなりの愚行だが)もあるな…。
40分ほどで水沢到着。しかし水沢駅ではなく、そこから500mほど離れたバスターミナルである。駅が必ずしも交通のターミナルとなっているわけではないという悲しい例。駅前通りはアーケード商店街となっているが、閑散としている。まさにシャッター通りである。ここは水沢のメインストリートでなければならないはずだ。しかし行き交う人はまばらだ。仮にも祝日ですよ。この「メインストリート」を、低速で走る競馬場の宣伝車の音がもの悲しく響きわたり、こだまする…。この「はね返りの無さ」が人口密度の低さを物語る。
ここ水沢バスターミナルでバス乗り換え(一日に三本という路線)。特に時間を過ごすところも無いようなこんなところで30分も待たなくてはならない。
バス停の前でふるえていると、割とお洒落な感じの女の子二人組が通り過ぎた。…はて。お洒落をして遊びに行くようなところが果たしてこの辺りにあるだろうか。駅の方向へ行くならまだ分かるが、反対方向へ通り過ぎて行ったのである。
その先を見るとジャスコ。まさかね…。
あと20分もあるので、とりあえず暖を取れれば、とジャスコへ向かった。
なんと驚くべきことに先ほどの二人組はこのジャスコに向かっていたのであった。しかも行ってみると、さらに驚くべきことにまだ開店前である。二人組はこの寒い中、開店20分前に外で待っているのである!ジャスコで、ですよ。さらに!よく周りを見てみると他にもたくさんの人(しかも若い子が多い)が開店を待っていた。あの二人組が例外という訳ではなかったのだ。他に店外のベンチに座って手を繋いで待っているカップルもいた。開店を心待ち、今日はジャスコデートなのである!
いや、まさか。そうか、今日が特別なのだ。きっととんでもないセールをするに違いないと、窓に貼られていたチラシを見てみるが、特に開店20分も前から待たなくてはならないようなセールをやるのでも無かった。
つまり。つまりこれが常態なのである!恐るべし。告白すると、今回の旅行で一番衝撃を受けたのはこの水沢ジャスコである。今でも信じられないのである。
ジャスコには魅力がない、といっているのではない。自分とは違う世界の見方(価値観とか)を持つ人が、思いがけないところにいて、しかもそれに自分が驚いてしまったということ、一気に自分の価値観を覆すようなことに出会ったのが、信じられないのである。ある種、敗北感に近い感覚である。完全に打ちのめされた。完膚無き完敗である。
うっすら赤く塗った部分、一番右がお洒落二人組。二番目がベンチのカップル。三番目、四番目も若い子たち。つわものどもである。
しばらく呆然としてしまい、その後バスを待つ時間も短く感じられたのだった。
さて、乗車したのは正法寺線のバス。水沢市の南東の奥地にある禅刹正法寺を終点とする路線である。今日最初の物件はまさにこの正法寺。一日に三本。朝に一本、昼に一本、夕に一本。分かりやすい。これほど本数が少ないと、帰ってくるのも命がけである。最も効率がいいと思われたのが、今乗車した朝の一本。それでも終点正法寺に到着後、15分未満で折り返し運転のバスが発車する。つまり正法寺の拝観時間は15分未満ということになる。
こういうマイナー路線となると、おきまり。我々以外に乗客は無い。いつものことで、もう慣れきってしまった。
たしかに風格は感じる。参道脇の杉も数百年という樹齢を重ねている。ただ…早いところ見てまわらないと帰れなくなる。
山門脇には謎のムダに顔の大きい地蔵…。不気味だ。
急な階段を上り詰めると、見えてくるのは上の素敵な鐘楼。格好良すぎ。
しかし侵入は不可。
方丈内に入ると土間。そこに立つ韋駄天像。
かなり屋根の高い建物だ。はしごが見えるのが気になる…。
方丈の一室をのぞくと、そこには等身大かと思うほどの達磨像(左)と閻魔像?(右)。ここまででかいとちょいと不気味ですな。しかも椅子に座ってるし。ふすまを開けたらこの光景。誰か居るのかと思って「すみません…!」て言いそうになったよ。
中央には位牌が置いてあった。桐の紋が確かにここは曹洞宗であることを伝えている。
もう一つの部屋は…祖師堂か?達磨絵と木像千手観音。色んなものが置いてある部屋だ。
方丈はここでとぎれる。外(右写真)に出れば分かるが、その先がない。右写真の左端の大きな建物は本堂。現在修築中で入れない。つまり今のところこのお寺で拝観できるのは方丈のみとなっている。
詳しく見ていきたいが、何しろすぐに折り返しのバスが出てしまう。のんびりとはしていられない。
お寺を出たところには無料の休憩所があった。小さな資料館も兼ねていて、正法寺を中心とした水沢の歴史解説がなされていた。食事処も併設されていたが現在は営業時間外のようだ。売店もあったが全くの無人。
資料コーナーでは正法寺の本堂写真が。立派な茅葺きのお堂である。屋根裏で養蚕ができそうな感じ。
何故か分福茶釜の掛け軸。かわいいので撮った。云われ・由来を知りたかったが、詳しく見ている余裕が無い。
これが時刻表。土・日・祝日は特に激しい。なんと二便しかない。
バスに乗車。水沢市街方面へと戻る。
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