近江京師巡礼 2007年8月11〜14日

草津で大津方面へ乗り換え。膳所で京阪線へと乗り換えて、別所で降りる。

これから向かうは大津絵美術館を併設しているという円満院という門跡寺院。

大津絵は以前より気になっていたもので、名も無い絵師により描かれた一種の風刺絵。

 
別所駅から円満院に向かう途中、歩道には大津絵とその解説が設置されていた。左は「猫と鼠の酒盛り」。鼠は猫を騙して酒を飲ませ、肴に唐辛子をやろうとしているが、当然猫の肴は鼠。策に溺れると自滅するという意味のようだ。右は「長刀弁慶」。

 
左は「鬼と柊」。鼠が咥えているのは鬼除けとして使われる柊。鬼が鼠に追い込まれているという構図。「許せ、許せ」と鬼の切実なセリフが書かれている。「瓢箪鯰」。禅画に「瓢鯰図」というのがあり、丸い瓢箪でぬるぬるしているナマズを抑えつけようとするものが妙心寺の塔頭退蔵院にあるが、それをもじったものらしい。


坂本の街にはこのように石垣が組まれている。これも天台宗による対信長索なのだろうか。

円満院

 
円満院到着。門跡寺院だけあって落ち着いた雰囲気だ。奥に見えるのは宸殿。


円満院方丈までの通路に、なぜかこんなものが…。足を鋲で留められてるし…。


宸殿からは橋が架けられ、別の堂宇と接続していた。が、通行不能。奥に見えるのは廟所かもしれない。


落ち着いた書院造り。

 
杉戸には絵。かなり剥落したり褪色している。


外観は落ち着いているが、門跡寺院だけあって内部はゴージャス。なぜか扇投げがセッティングされていた。


中央には潅頂を行う道場となっていた。潅頂道場内の襖絵を見ていこう。まず正面には、祭殿の前で稲のもみを叩く様子が描かれていた。


今度は右側の襖絵。右の人間二人と、左の鳥の大きさが合わない。背景も違うのでたぶん違うふすまが嵌められているのだろう。鳥は全部で四羽描かれている。孔雀だろうか。左の岩場に立つのは派手なので父、右の中央で蹲っているのは母、その両脇の二羽は子だろう。


左の襖絵。これから戦に出る図だろうか。鎧が日本のそれではなく、大陸的だ。シナ風とモンゴル風が混在している。


玉座の間まであり、門跡寺院ならではとなっている。寺院なのに世俗王としての玉座が存在するということは、権力とは無関係でいられないことを意味していよう。



宸殿の内部はこんな感じ。

 
池ではカメが気持ちよさそうに泳いでいた。

 
廟所? と連絡する橋。蔀戸となっているのが、また門跡寺院らしい。


なんと、順路を示す立札に蝉の殻が! こんなところで羽化するのか…。それにしても誰も気づかないのか?

ここからは大津絵美術館。


十二支が水墨画で描かれていた。猫のような、ずんぐりしたかわいい虎を発見。まぁ日本人にとっちゃ想像上の動物だからね、完璧に。だからどうしても大きい猫になっちゃんだな。


龍。全体を描いていなくても龍だと分かるのが凄い。暗雲と稲妻を上手く表現している。


犬〜!


青面金剛だったかな…? 猿が居るのでそうだろうと思うんだけど、三匹ではないし、他にたくさんいるし…。太陽と月が出ているので、ひょっとすると北辰妙見菩薩かもしれない。鶏が居るのが気になるんだよなぁ…。


さて、ようやく大津絵らしきものが出てきた。鞍馬天狗と牛若丸だろうか。斧を持つ天狗も、鼻を掴まれ、ひょいと持ち上げられてしまった。扇子を持っている牛若丸に、芸のような余裕が見られる。

 
出ました! 大津絵といえばこれ。鬼の念仏。念仏して回る僧侶の、醜い心を風刺した絵だが、これはそれを3D化した珍しいもの。右がその元絵。よくできているなぁ。 大津絵ではないが、展示されていた絵巻物が気に入ってしまい、こちらがメインになってしまった。

 
それがこれ。どうやら行き地獄と言うべき、この世で受けるあらゆる災難を描いている。まずは大蛇、逃げる父親の背中に張り付く子供。


野犬に追われる人々。実は逃げる先にも野犬が居て、はさみうちになってしまっている。


大鷲に子供を攫われる図。

 
呆然とする子供と、それを追う親。ムシロの上には瓢箪や人形などがあり、子供はここで遊んでいたところを大鷲に攫われたようだ。以上、動物からの受難を描いている。

 
雷に慄く人々。稲妻の表現が凄い。破れ傘や笠で風雨を凌いでいる。雨を直線で表現するのは、日本人ならではだ。


雷が落ち、木を真っ二つにしている。地面で弾けている。以上、風雨、雷からの受難を描いている。

 
火災。火柱の表現が壮絶だ。凄過ぎる…。柱に下敷きになってしまっている人も描かれている。畳を背にし、火除けにして逃げている人もいる。

 
身一つで逃げだす人々。

 
火消しが登場。馬が目を剥いて駆けつけている。黒い団扇は、火の進行方向を変えるためのものか。あとは燃え移る対象となる家屋を毀すための道具を各自が持っている。梯子もある。以上、火災からの受難。

 
今度は水害。今にも沈みかけている船に必死でしがみつく男。迫りくる大波を見て動けなくなっている。

 
屋根も天井も飛ばされた家。逃げることさえできない老人。自然の猛威にただただ慄くのみ。

 
。蜜柑の木にしがみついて洪水から何とか逃れようとしている人。だが、一人が流れに飲み込まれてしまった。木にしがみついたからといって安心できない。蛇が二匹泳いで襲いかかろうとしているのだ。

 
家が簡単に流されてしまっている。必死で屋根にしがみついている人がいる。

 
今度はおそらく地震。鳥や犬などは危険を察知して倒れる家屋から離れている。


母親にしがみつく子供。母親も手で頭を押さえて身を低めている。たぶん立っていられないのだろう。

 
竹にしがみついている人が居るので、この絵が地震を描いているのがわかるのだ。竹にしがみつく母親に子供がしがみついている。

これらの絵巻物、何と円山応挙の作品だった。何を思ってこんな生き地獄図を描いたのだろう。すさまじい。

この絵に夢中になってしまい、すっかり予定の電車に遅れてしまった。やばいやばい…。


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