恐山巡礼 2002年8月10〜12日

11日

 今日の予定は下の通り。

八戸 9:43
野辺地 10:28
10:32
下北 11:17
11:25
恐山 12:08
15:22
下北 16:05
16:52
野辺地 17:50
18:11
八戸 19:01

 八戸から恐山まで行って帰ってくる。恐山で3時間以上滞在するという余裕のあるスケジュールだ。しかしこのスケジュールはがたがたに崩されることになる。

 八戸駅に到着すると、駅弁屋で「いわし蒲焼風弁当」を受け取る。恐山あたりで食べようと思った。

 ホームには既に電車がやって来ていたので乗り込んだが、遅れて到着した特急を先に行かせてから出発ということで、7分ほど遅れて八戸を出た。この位の遅れであればなんとかなると思っていたが、甘かった。

 八戸を出るとのろのろ運転が続いた。昨日から降り続けている雨の為に時速35キロメートル以下の徐行運転で進むという。かなりイライラさせられる。陸奥市川〜向山間は徐行運転、向山を出ると普通の速度で進んだが、予定よりずっと遅れている。ちょっと不安になってきた。

 上北町という駅に停車すると、車内にどん底に突き落とすような悪魔のアナウンスが流れた。「大雨のため、全ての電車の運行を中止することになりました。復旧するまでしばらく上北町駅に停車します。なお復旧の見通しは全く立っておりません。」・・・最悪だ。現在11:00。雨は止むどころか勢いが強くなり始めている。恐山に行くどころか、今日中に八戸の宿にすら戻れないのではないか、と不安になる。

 上北町駅はかなり中途半端な駅。駅前には何もなく、変なところで足止めを喰ってしまった。野辺地で大湊線に乗り換え、下北へ向かうのだが、車掌に聞くと大湊線も運行中止になっているとのこと。

 ただでさえ少なかった乗客も次第に電車を降り、家族に迎えにきてもらったり、タクシーなどで移動を始めているようだ。

 車内は閑散としてきた。電車が動く気配が全然ないまま、お昼の時間が近づいてきた。「飲み物は駅を出てすぐのところに自販機がありますが、食料は、店が駅からだいぶ離れたところにあるため調達は難しいです。ご了承ください」と車掌からアナウンス。僕には駅弁があるのだ!!

 これが楽しみにしていた「いわし蒲焼風弁当」。これは本当に美味しかった!乗客の中で唯一僕だけが昼食を取ることができた。

 12:00を過ぎたところで隣の線路に貨物列車がやってきた。貨物列車もここで少し停車していたが、10分ほどで出発した。復旧は近いのだろうか。「只今貨物列車がこの先の安全確認の為に出発しました。」とのアナウンス。期待したい。

 食べ終わったところでやっぱりすることが無い。貨物列車が行ってから大分経っているが、復旧する気配が全くない。雨はだんだんと勢いを失っているが、それでも電車は動かない。窓から見える雨が恨めしい。駅舎で時刻表を確認したところ、13:00を過ぎても電車が動かなければ恐山は諦めることになりそう。その場合、タクシーで野辺地まで行くことにする。タクシーの運転手に拠れば5000円はかかるとのこと。イタイ出費だが、一縷の望みを懸けてみようと思う。だって一日かけてやっとここまで辿りついたのだから。

 リミット13:00の数分前になって上北町の駅長らしき人が騒ぎ始めた。なんともうすぐこの電車は野辺地まで一応進むとのことだ。急いで乗り込む。上りは復活しないが、取り敢えず下りだけ動くとのこと。今から八戸に戻ることもできなくなっている。恐山に行けるかどうか分からないが、上北町駅に居ても始まらない。取り敢えず野辺地まで行ってみることにした。13:00を数分過ぎたところでやっと動きだした。それでも徐行運転。イライラさせられる。

 野辺地駅の一つ前の千曳駅は、今まで見た東北のどの駅よりさらに寂しい駅だった。周りを見渡しても、車の通れるような道が見つからない。完全に孤立している駅。千曳駅・・・。たしかこの駅は・・・。帰ってから確かめたのだが、やはりこの千曳駅は「秘境駅」だった。秘境駅というのは、「存在意義を疑うような駅」のことで、うっしー氏が運営する秘境駅というHPで紹介している駅物件のこと。僕はこのHPで既に千曳駅を見ていた。

 やっと野辺地に着いたのが13:30頃。上北町駅からたった3駅なのに30分もかかっている。

 野辺地に着いたところで駅は混乱状態になっていた。大湊線のホームには電車が来ていて数人が乗っていた。乗り込んだところでアナウンスが。聞き取れなかったが、代行バスが走るらしい。野辺地に到着してすぐに代行バスに乗れるとは幸運。この代行バスに乗れば、滞在時間は短くなるがなんとか恐山に行くことが出来そうだ。

 代行バスからは海が見えた。こうしてみると海は穏やかなんだよね。とても電車が止まるような雨じゃないように思えるから、悔しい。

 代行バスは1時間以上かけて下北駅に到着した。15:00。下北駅前のバス停の時刻表を見ると、恐山行きの終バスは15:30に出るとのこと。恐山に到着するのは16:15、恐山からの終バスは16:50らしい。恐山滞在時間は当初3時間の予定だったのに、たった35分程になってしまった・・・。まぁ、仕方ないね。

 バスを待っている間、下北駅で見つけた「お知らせ」。

 わざわざ「お知らせ」することかよ!下北応援歌って何だよ!

 15:20頃、恐山行きのバスがやって来たが、バスの正面の行き先に大きく「霊場恐山」とあったのは驚いた・・・

 15:30、バスは動き出したが、乗客は僕一人・・・

 このバスがまた炸裂なのでした・・・。途中まで「○○高校前」とか、普通のバス停を通過していて、車内の放送も普通でしたが、途中「念仏車」というバス停があったのには驚いた・・・。凄い名前だよね「念仏車」。「まさかりプラザ」というのも訳がわからなかったけどね。下北半島の形が「まさかり」に似ているから「まさかりプラザ」なのだそうだが、何の施設なのかさっぱり・・・

 次のバス停案内が「長坂」となった時点で、バスの車内放送が始まった。恐山のいわれや歴史などを説明したり、「一つ積んでは母のため〜」と歌い始めたりと、かなりやばくなってきた。このバスはまさに恐山の為に存在するバスなのである。

 恐山に到着する前、山の中腹に「冷水(ひやみず)」と呼ばれるわき水があって、巡礼者はこれを飲んでから恐山に参るそうだが、バスの運転手も心得ていて、冷水前でバスを止めて、「行って来て下さい」などと急かしてきた。僕以外には、花を持ってむつバスターミナルで乗ってきたおばさんがいたが、おばさんは動こうとしない。僕は当然行く。バスの運転手に飲めることを確認、まずは写真を取る。

 僕は右側の水を柄杓にとって二度のんだ。バスに酔っていたが、この水を飲むことによって気分が好くなった。別にこの水に霊性とか魔力とかがあるわけではないが、まぁ、好かった。

 やっと恐山に到着した。

恐山菩提寺(円通寺)

 バスに乗っている時から硫黄臭かった。

 恐山とはもともと「うそり山」だそうだ。ウソリとはアイヌ語らしい。意味は知らない。

 到着は16:10、終バスは16:50。40分で見学を終えなければならない。ちなみにこの時、時間を確認するために携帯電話のディスプレイを見たのだが(僕は腕時計を持っていない)、圏外・・・。やっぱり恐山は異界なのです。

 これが山門。結構立派である。

 これは本堂の地蔵堂。ここ恐山の本尊は地蔵菩薩である。

 
 恐山といえばこの荒涼とした風景だね。草木が生えてないので寂しさがある。右写真の中心に立っているのは地蔵。地獄に立つ地蔵菩薩のイメージだろうか。

 
 石が積み上げられている。殺伐とした風景だ。凄い。まさに地獄のイメージだが・・・。

 寂しさを盛り立てているのはやっぱりこの風車だろう。これは寒々としている。やばいよ・・・。

 
 これは宇曽利湖。本当は近くまで行きたかったのだけど、時間がないので望遠で撮った。恐山はあの世のイメージがあるが、非常に静かな、穏やかな感じがする。地獄というイメージではない。かといって極楽というイメージでもない。でも確かにこの世ではなく、あの世であるが、静かな穏やかな場所という意味の「浄土」というイメージがぴったり来るところではなかろうか。湖面は静かに水をたたえていて、荒々しさは感じさせない。

 これは温泉小屋。入山料500円払って境内に入るのだが、境内には全部で四つの天然温泉小屋があって自由に入れる。できれば入りたいが、時間がないからね・・・。恐山には一泊二食5000円の宿坊がある。今度来るときは宿坊に泊まってみたい。宿坊の食事は精進料理ではあるが、本物の板前が作るので本格的で美味しいらしいし、量も多いそうなので期待できる。

 宇曽利湖に流れ込む川に架かっている太鼓橋。この川は「三途の川」らしい。まさにあの世なのである。

 
 宇曽利湖は静かで寂しい感じがするが、穏やかで優しい感じがする。

 朱印帳を求める。二冊目の朱印帳は「恐山」の文字が入っているのが欲しかったのだ。

 地蔵菩薩。「霊場恐山」のロゴはやはり迫力があるなぁ。

 

 もう時間も無くなってきたので、みやげものチェックをすることにする。

 これは恐山銘菓「伽羅陀せんべい」。甘い味がする。なんか怖いよね・・・。中に「生命ある世の万象は み佛のすべて尊きいのちなり 伽羅陀にこもる佛法の味。」という札が入っていた・・・。「佛法の味。」なんだ・・・。ところで伽羅陀(からだ)って何だろう。

 これで今日から君も雲水だ!みたいな感じ。

 これは「霊場恐山」と文字の入っている箸。なんだか怖いね。宿坊に泊まると、この箸が渡され、毎食事で使われて最後に自分の分を持って帰ることができるそうだ。

 他に細かい文字で般若心経が書かれたネクタイやハンドバッグが売られていた・・・。誰が買うんだろう・・・。

 
 ところで入山券にはかわいい感じの地蔵菩薩が書かれている。イメージアップを図っているのだろうか・・・。微妙だけど。

 それと、「恐山ニュース」が無料で配られていた。

 
 何か記事が少ないんですけど・・・。文字も大きくて写真ばっかりだし。書く事無いんだね。まだ九号だし。歴史浅い。
 「恐山ニュース」・・・。

 恐山ニュースの中で気になった写真がこれ。

 

 宇曽利湖に回廊を作っています。「大灯籠流し供養祭」だそうです。

 一通りやることを済ませてトイレから出るともう終バスの時間。これに乗り遅れたら本当に洒落にならない。バスには3人のコーカソイドが乗っていた。コーカソイド・・・。何でわざわざこんなところに来たんだろう・・・。男3人の旅らしい。

 土砂降り、たった40分の恐山訪問はすぐに終わってしまった。仕方ないね・・・。

 コーカソイドと共に下北駅まで戻ってきた。時刻は17:30。大湊線の野辺地行きは18:30だそうだが、やっぱり雨の影響で電車がとまっているらしい。18:30頃、代行バスが来るとのこと。ま、バスは動いているので、野辺地までは確実に帰れる。

 その先、野辺地から八戸までは、もう既に復旧していて無事帰れるだろう、とこの時点では楽観的に考えていた。

 18:30まで何もやることがない。ヒマな時間を過ごした。この後何時まともな夕食が取れるか分からないので、駅近くのホット・スパーでおにぎりを買って食べた。コーカソイド達はスパーでカップラーメンを買って食べていた・・・。

 コーカソイド達を観察していて気付いたことだが、1人は日本語がやたら上手い。多分こいつは日本に住んで長いのだろう。あとの2人はこいつの友達で、日本に呼び寄せて旅行をしているのだろう。

 18:30頃、やっと代行バスがやってきた。今度は各駅に止まっていくので遅い。野辺地まで到着したのは20:00だった・・・。あー疲れた。

 さて、野辺地から先、八戸までの電車だが・・・。駅内は混乱を極めている。たくさんの人が詰め寄っていて騒然としている。窓口で駅員に聞いてみると、電車も代行バスも全くないそうだ。ああ・・・やられた。八戸まで戻れない・・・。ここで夜を明かすのかと思うと辛くなってきた。このまま駅でぼーっとしていても電車もバスも無いのだから仕方ないが、かといって駅の外に出たところで仕方ないので、雨を避けるためというかなり消極的な理由で駅の中でぼーっとしていた。なんだか今日中に電車が復活するような気配は全然感じられない。絶望した。こんな駅で足止め。こんなピンチ初めてだ。

 駅内にごったがえしていた客達は徐々にはあるが次々に減っていく。みんな地元の人で、家族に迎えに来て貰っているようだ。うらやましい。コーカソイドはというと、駅内の床に座り込んで荷物整理を始めている。歌まで歌っていて余裕だ!羨ましい。頼れるものが無いという状況は辛かった。一人旅をしていてはじめて深刻に孤独を強く感じた。

 自販機でカロリーメイトを買って食べ、孤独を紛らわす。それ程空腹は感じていなかったが、寂しかったし、ヒマだった。

 この駅で夜を明かすことを覚悟していたが、9:00過ぎ、青森から復活した上り特急が徐行運転でのろのろではあるが、確実にこちらに向かっているとのアナウンスがあった!これは闇に差し込む光明である。これに乗ることができれば八戸駅までなんとかたどり着くことができそうだ。18きっぷ使いには辛いが、この特急を逃してはいけない。特急券を買って待つことにした。

 10時頃、すぐ近くまで特急がやってきているということなので、ホームに急ぐ。眠い。遅いが、着実に動いてはいるので、八戸駅まで戻ることはできる。しかし、今度は八戸駅から宿までどうするか、という問題があった。もうとっくに終バスは出てしまっていた。財布には1500円しかない。タクシーを使うには頼りない金額である。かくなる上は行けるところまで行ってもらって、1500円に達したところで降ろして貰い、後は歩くしかないなと腹をくくっていた。

 22:30頃、やっとホームに待望の特急が到着、乗り込む。適当に席を見つけ腰を降ろす。野辺地から2駅までは徐行運転。もうこうなってしまっては時間を気にする必要もない。終バスは出ているのだから八戸に早く着こうが遅く着こうが関係ないのだ。

 それでも特急本来の速度に戻った時はさすがに嬉しかった。野辺地では生きた心地がしなかったが、今ではこうして快適な特急に乗っている。気持ちに余裕も出てきた。なんとか宿までは歩けるかもしれない、と覚悟をきめていた。

 23:45頃、八戸に到着し、改札を抜けようとしたところでふと気付いた。特急が2時間以上遅れると特急券は払い戻しになることを!!客は列をつくって払い戻しを求めていた。特急券を払い戻して得た950円でタクシーに乗って宿まで行けるかもしれない。

 駅を出てタクシープールに急ぎ、運転手に聞くと、1900円くらいで行けるとのこと。無論乗る!!こうして僕はやっと宿に戻ることができたのだ。

 フロントの自販機で「赤いきつね」を買って温かい、遅い夕食を食べた。生きた心地がした。本当に涙が出そうになった。

 ちなみに僕は、ビジネスホテルで夜食にカップラーメンを食べるのが大好きだ!人によっては「むなしい・・・」と思うかもしれないけど、僕は大好き。

 お腹も気持ちも満足したところで眠りに就く。今日は本当に長い一日だった・・・。

 と、その前に!天気予報で知っていたことだが、明日も今日と同じ気象条件が続く。明日も電車の運行が中止になったり、遅延したりするかもしれない・・・。そこで八戸駅で明日の交通手段について調べておいた。お金がかかるかもしれないが、こんな状況でそんなことは言ってられない。まず、八戸から南方への高速バス。電車がダメならバス、ということ。もうこれくらいしか思いつくことができない。東北の天気予報を確認したところ、仙台以南であれば雨は降らないらしい。そこで、八戸−仙台の高速バスを使うことにした。気がかりなのは「定員予約制」だということ。

 ま、今悩んでも仕方がない。取り敢えず明日は早く起きて早めに駅に行き、電車の運行状況を確認して、対策をねることにした。


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