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越南漫遊記 2010年5月24~30日

一柱寺

chùa một cột

ホーチミン廟

lăng chủ tịch Hồ Chí Minh
2 ông ích khiêm
4/1-10/31 7:00-10:30,
11/1-3/31 7:30-11:00

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一柱寺

8:20。さて、文廟からは各スポットを見ながらホテルへと帰るルートをとる。つまり、
文廟→一柱寺→ホーチミン廟→鎮武観→鎮国寺→ホテル
というルートで、文廟は各スポットの中で一番南に位置しているのだ。

が、移動しようとしてすぐ迷った。タクシーで来たために方角が分からなくなってしまったのだ。『地球の歩き方』を手にしていたが、この辺りの詳しい地図は載っていない。

すぐ傍で公安警察と話していたおっさんと目が合ったので、道を訊いてみたら意外に英語ができる人だった。大まかに鎮国寺までの道を訊いたのだが、
「本当に歩くのか? 4,5kmはあるぞ!?」
とびっくりしていた。地図で見るかぎり鎮国寺までは2kmほどであり、そこまで距離が無いことは知っているので、
「ああ、歩くよ」
と返してみたら「やるな、頑張れよ」的な感じで肩を叩かれ、分かりやすく示してくれた。

後でこのやりとりをロアンさんに話してみたら、「ベトナム人は基本的に歩かないので、びっくりするのは当然」とのこと。ロアンさんは逆に日本に来て歩いている人を見てびっくりしたという。そういえばベトナムに来てから、街を歩いているベトナム人を見ない。みんなバイクに乗っているから、このおっさんみたいに距離の感覚がおかしくなっているのかもしれない。日本の田舎でもそうだ。近くのところに行くにでも車しか使わないから、歩いてどのくらいかかるのか分からないのだ。

おっさんに感謝して、ホーチミン廟のあたりまでてくてく。ハノイでは店が歩道を占拠していたり、歩道が壊れていたりして、歩道としての体を為しておらずとても歩きにくい。

ロアンさんのリードなして初めて道路の横断もした。最初は怖かったが、昨日ロアンさんから教えてもらった通りゆっくりと歩いたらバイクが勝手によけてくれた。奥さんは怖がっていたので、バイクが来るのとは逆のサイドに付いてもらうようにした。カルガモの親子のように縦に並んで横断すると、バイクにとってはよける面積が増えてしまい危険なのだ。だから、横並びで横断するのが正解。何度かやっているうちに慣れてきたが、青信号がすぐに変わってしまうのには辟易した。青になったと思ったら3秒で点滅、そして3秒後には赤になり、バイクの群れが走り出す。凄く怖いので気をつけなければならない。

途中で出会った「いかにも」なベトナミーズ。このまま絵はがきになりそうだ。

小さな店が軒を連ねているが、店の前は歩道であり、決して駐輪場ではないのだが、たくさんのバイクが我が物顔に駐まっている。というわけで、写真に写っている女性のように、歩行者は車道を歩くしかないのだ。

先ほど入った文廟の西側に建つ四阿。文廟のパンフレットにはgiám park gardenとある。giámとは「国子監」の「監」のことだろう。

途中で見つけた名も知らぬ教会。

一柱寺の場所を探してうろうろしていると、ホーチミン廟が近いためか政府の警備の係がこっちを注視し始めた。「社会主義国」というキーワードが頭をよぎったが、こういうときは何も知らない旅行者をそのまま演じれば良いだろう。
"i wanna go to chùa một cột"
と言うと道を教えてくれた。chùa một cộtとは一柱寺のこと。ベトナム語で寺のことをchùaと言う。後ろから修飾するため、寺を意味するchùaが先に来ているというわけだ。một"は一、cộtは柱のことだ。そのまんま。

ホーチミン廟前ではたくさんのベトナム人が列をなしていた。これは廟に入るための行列だった。ベトナム人にとってもホーチミン廟は観光地になっている。内部は私語禁止、立ち止まることも禁止、カメラは入り口で預けるシステムと、かなりの厳戒態勢をとっている。

一柱寺のそばにあるホーチミン博物館。入ってみたかったが、時間の関係上残念ながらパスすることに。

なお、ホーチミンを過度に神格化することを公然と批判する党員もいるらしい。特にこのホーチミン博物館は党員でも快く思っていない人がいるという。1990年に、ホーチミン生誕100周年を記念して旧ソ連の援助で建てられたらしい。

8:45。一柱寺着。その名前の意味が分かっただろうか。ただ一つの柱によって支えられた寺、というよりほこらのようなもの。この建築は池に咲く蓮の花をそのままイメージしているらしい。拝観料は無料だ。

内部にはきらびやかに飾られた観音菩薩が安置されている。後背はパチンコ屋のような電飾によってビカビカ光っていた。この辺りは東南アジアのそれっぽい。

ちなみにベトナムは地域的には東南アジアに属するが、東南アジアでは唯一大乗仏教を奉ずる。菩薩という存在そのものが大乗仏教の象徴みたいなものだ。菩薩とは解脱しようと思えばできる存在なのに、衆生の救済のために解脱せずに現世にとどまっている存在のこと。解脱を目的としている上座部仏教(小乗仏教)には当然この菩薩という存在はないし、菩薩像を作像して安置して参拝することもない。

ベトナムは1000年間シナ王朝の支配を受け続け、独立した後も対抗文明の例にもれずシナ文化をスタンダードとしてきたため、大乗仏教を奉じている。当然漢字文化圏に属しているし、中華思想も持っている。なお、ベトナムの中華思想に関してはフエの旅行記を執筆する際に詳しく述べることにしよう。

ともかく、ベトナムは地理的には東南アジアに属しながらも文化的にはシナ文化をベースにしているというなかなか複雑な性格を持っている。だから、ベトナム史の扱いも、東南アジア史として扱えばいいのか、あるいは東アジア史として扱えばいいのかよく分からないところがあり、難しい。しかしそれがそのままベトナムの面白いところでもあるのだが。

一柱寺の辺りには観光客も居るには居るが、ベトナム人の方が圧倒的に多い。ただし、彼らは純粋に仏教徒としてお参りに来ているわけではなく、現世利益的なスタンスで来ている。ちょうど中国の道教のようなものだ。日本人にも共通しているところがあるかもしれない。大乗仏教は庶民の仏教として広まったが、庶民によって現世利益を求める民間信仰に変質してしまった。この辺りの感覚も他の東南アジアとは一線を画している。

一柱寺を離れて今度はホーチミン廟の方へ。

ホーチミン廟

内部には、エンバーミングされたホーチミンの遺体が安置されている。先述したが、ホーチミン自身は遺書にて火葬にし、遺灰をベトナム各地に撒いて欲しいと伝えたことを書いたが、遺書とは全く違った結果になっている。つまり、ホーチミンの希望は通っていないのだ。彼は個人崇拝に繋がることを恐れて一切の著作を遺さなかったくらいだから、レーニンのように遺体が保存されていることを嘆いていると思う。

このように、革命の指導者の遺体を安置する廟というのはあらゆる社会主義国家で見られる。一見すると、唯物史観や反封建主義を奉ずる共産主義とは相容れない個人崇拝や身分が存在するのは原理的におかしいが、共産主義自体も一つの宗教なのだと考えれば合点はいく。一神教は他の宗教を否定するが、共産主義も一神教の一つなのだろう。

ベトナムも共産党による一党独裁の社会主義国だが、ホーチミンを除き、政治家に対する個人崇拝はないようだ。ホーチミンに関しては、個人崇拝というよりは国民にとってはどちらかといえば慕われているように感じた。先にも書いたように、「さん」付けして呼ばれているし、ホーチミン自身、粛正だとか政争だとか、汚職だとかからは距離を置いた人物だったそうで、政治思想とは別のところで人気があるようだ。そんな謙虚なホーチミンに倣って、ベトナムの政治かは伝統的に謙虚にふるまっているそうだ。

ホーチミンは民族主義者なのか共産主義者なのか、という評価に関する問題があるが、私自身としては基本的に民族主義者であり、ベトナム独立のために共産主義を採用した、ということで納得している。

さて、本当はホーチミン廟の中に入りたかったが、この行列ではロアンさんとの約束の時間に間に合わなくなる。残念だがパスしよう。

ちなみに「ホーチミン」という赤い文字はベトナム産のルビーが使われているらしい。ホーチミンにとってみたら、そのルビーを売って、一人でも国民が豊かに暮らせるように使ってくれ、と思うことだろう。

さて、廟の前は広場になっていて、これぞ社会主義という感じ。ベトナムの国旗もたかだかと揚がっている。

ホーチミン廟を後にしてさらに北上。またも緑色の制服の公安警察の詰め所があったので先制攻撃。
"i wanna go to đền quán trấn vũ"
と言ったら、
"go straight"
と教えてくれた。đền quán trấn vũは鎮武観のこと。今度は道教寺院だ。

鎮武観の前に偉そうな建物を発見。色からして政府系なのははっきりしているが、地図を見たら大統領府だという。つまり国家主席のいるところ。大統領も国家主席もpresidentの訳で意味するところは同じだが、ベトナムのそれに相当するものの和訳が日本では一致していない。あるところでは国家主席、あるところでは大統領となっているのだ。ちなみに台湾ではpresidentの訳に総統を採用している。

いかにも共産主義的なプロパガンダ風看板を見つけた。何が書いてあるかは分からないが、一目でそれらしいと分かるのが面白い。

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