大和路巡礼 2006年8月12〜14日

去年は無為に過ごしてしまったお盆休み、今年は是非旅に出ようと思う。古寺をめぐり巡って濃い内容にしようと計画を始めた。

やっぱりどうせ出るなら西日本ということで、当初は、地味だがなかなか魅力的な琵琶湖周辺を中心に、若狭や京都三尾なども巡る計画を立てていた。それは2003年11月に敢行した「滋賀北陸異境巡礼」の再訪ヴァージョンとも言える内容だった。

確かにそれらの地域には古寺が多く、魅力的ではあるのだが、なかなか効率的に回ることができない。組んだ予定を俯瞰してみると、結局「古寺づくし」の旅という印象がなくなってしまった。

そこで思い切って奈良へと行き先を変更した。ここなら寺が密集しており、レンタサイクルや徒歩でたくさんの古寺を観てまわることができる。

確かに奈良の寺には、若狭や湖北・湖東のような質実剛健な雰囲気はないだろう。しかしその一方で、京都の諸寺にはない「洗練されてなさ」も持ち合わせている。それに何より奈良の諸寺は自分にとって未知。これまでろくに訪問していないし、特に調べもしていない。寺というのは意味で満たされた空間だ。ふらりと訪れた寺で、自分なりの空間の意味解釈を楽しみたい。

中学の修学旅行の時に訪問した地にも積極的に再訪するつもり。10年以上前には気が付かなかったものが発見できるかもしれない。

今回は久々にタイトルに「巡礼」を付けた。振り返ってみれば想像以上に寺づくしとなったからだ。

お盆休みの初日である12日、始発のぞみで西へ。6:00前だというのに大勢の人が駅舎内を移動していた。駆け足の人も多く、自由席の混雑は必至のようだ。

6:00、朝一ののぞみが出発。実は、のぞみに乗るのは今回が初めて。駅に到着する度に車内メロディとして「いい日旅立ち」がワンフレーズずつ流れる。ということは、東海ではなく、西日本の所有ののぞみのようだ。

ところで、となりに座った若い男の口が臭くて参った。通勤電車に居るおっさんの口のような臭いがする。彼のきっぷ入れには、几帳面にも自分の名前と「帰省用」の文字が赤で書かれてある。このナイーブさは、どうみても大学一年生の初めての帰省、といった印象だ。この歳ですでにおっさんの臭いがする口ってどうだろうか…。

彼は缶のアイスコーヒーを持ち込み、テーブルに置いたままだ。多少臭いが中和されるのではと、彼がそれを飲みはじめるのを期待していたのだが、なかなか彼は手をつけようとせず、眠りに入ろうとした。

彼はほとんど目をつぶっていたが、なかなか眠れないようで、やたらと体を動かし、伸びをして深呼吸する。その度に強烈な悪臭が自分を襲うのだ。さらに最悪なことに自分のほうに顔を向けて寝たりする。せっかく窓際の席なのだから、窓に顔を向けて寝たらいいのにと思う。彼の息がとどかないよう、上半身をかがめて本を読んだりしたが、無理な姿勢のため頭痛が起きてしまい姿勢を戻さざるを得なくなった。

そこで、彼が深呼吸をした時に本で顔を扇ぐように悪臭を散らすという作戦。これでどうにか京都まで過ごしたが、それでも吐きそうなくらいに気持ちが悪くなってしまった。

口臭だけだと思っていたのだが、寝息まで臭いということは、どうやら鼻の息までもが臭いようだ。一体どうなっているのだろう。

やはり客は多く、指定席の車両にまで立ち客が現れた。自由席はもっと凄いようで、実際、乗り降りに時間がかかったせいで少し遅れているようだ。

結局彼はコーヒーを開けることすらせず、京都の手前で紙袋(東京みやげが入っている)に仕舞った…。どうやら彼も京都で下車のようだ。結局京都までの2時間を、悪臭とともに過ごさなくてはならなかったのだ。京都には8:25分着。10分ほど遅れて到着した。

京都到着後、駅舎内の空気を吸っていたら、だいぶ気分が回復した。駅舎内の空気だって悪いはずなのに。相当の悪臭だったんだろう。

駅到着後、ダッシュで近鉄へ。荷物の一部をロッカーに入れて出発しようと思っていたが、新幹線の到着が遅れたため、その時間はなくなった。奈良行き特急の出発時間にはぎりぎりで間に合ったのだが、全車指定席で、特急券は予め購入しておく必要があるらしい。ホームで券売機を見つけたが、既に販売終了。駅員さんに話すと、とりあえず乗っちゃってくださいとのこと。

適当な席に陣取り、荷物を下ろし始めると電車が動き始めた。すぐにやってきた車掌から特急券をもとめた。

近鉄に乗るのは今回が初めてだと思う。近鉄特急には、おしぼり(といっても紙おしぼりなのだが)のサービスがある。ただ、こういう心意気くらいはJRも真似してほしい。

特急といってもあまり早くなく、停車駅を減らしているだけのようだ。ただ、それでも京都から奈良まで30分ほどで着く。

京都駅を出るとすぐに右手に東寺の塔が見えた。今日、もしくは明日あたりに東寺を再訪する予定だ。全ては今日の予定の消化具合による。実は、今回2泊とも京都の宿をとった。奈良を回ったあと、いちいち京都に戻ってこなくてはならない。奈良の滞在時間はできるだけ多くしたいが、東寺の拝観終了時間も気になるため、なかなか難しい。

さて、今回は「奈良大和路フリーきっぷ」(「東京から」の設定で17140円)を使用している。フリー区間は〔奈良県内+京都までの往復区間〕と広範囲で、JR、近鉄の鉄道路線、奈良交通のバスが利用できる。さらにフリー区間までの往復のJRの運賃も含まれている。新幹線の特急券は別に用意しなくてはならないが、東京〜京都間の往復運賃は15960円だから、京都〜奈良間を近鉄で往復しただけでもう元が取れてしまうかなりオトクなきっぷ。利用可能日数は8日間。今回は3日間のみの使用だが、充分に活用できた。ところで17140円という半端な値段と、8日間というやけに長い日数(こんな日数をかけて奈良旅行をする人は存在するのだろうか…)はどのような経緯で設定されたのか…。

西大寺を出て、右手に復元朱雀門(平城宮跡の一部)が見えてくると奈良はもうすぐ。ただ車窓はのどかなまま。京都のように都会都会していないところも、奈良の魅力の一つかもしれない。

9:00頃、近鉄奈良に到着。地上に降り立つと(近鉄奈良は地下駅)…。暑い。午前の早い時間だというのに既にして非常に暑い。ひょっとしたら奈良は涼しいかも、という無根拠な期待はくじかれた。とにかく日差しが強い。3日間ずっと外を歩き回るので、先ほどの特急の車内で日焼け止めを腕に塗っておいた。これがどれだけの効果をもたらしてくれるのだろうか。

しかし凄いね。3時間前には東京駅に居たというのに。少しぼんやりしていたら奈良についちゃうんだね。新幹線はやっぱり凄いよ。

早速バスターミナルへ。まずは白毫寺だが、表示を見ると大通りの向こうのバス停から出るもよう。バス停に到着する直前にバスがやってきた。白毫寺行きのバスは極端に少ないのだが、接続がうまくいったので一安心。

途中奈良公園内を通過するのだが、この時間で既に人がたくさん集まっていた。奈良公園内の物件を先にするか後にするかで少し考えていたのだが、やはり夕方頃の遅い時間に訪問するべきだろう。

白毫寺バス停はかなりのんびりとした雰囲気の場所に立っていた。白毫寺は奈良公園の南に位置するが、それほど離れているわけでもない。

自分のほかに一人旅風の女性がバスを降りた。バス停からは少し距離があり、その間、ゆるやかな昇り坂を10分ほど歩く。日差しが強いので帽子をかぶっていこう。


白毫寺の入り口。「花の寺」だそうだが、それをいいことになんだか伸ばし放題にしているような感じ。

「白毫」とは聞き慣れない言葉だが、調べてみると仏の眉間にある渦巻き状の白い毛のことらしい。仏像では丸で書かれていたり、光る丸いモノで代用されていたりする。

白毫寺には境内には既に先客たちが。年配の女性が多い。

 
本堂。内部にはこぢんまりと阿弥陀+観音・勢至が。観音と勢至の両脇侍が膝を付けて前傾姿勢になっている。片膝を立てて何かを持っているような手をしているのが観音で、両膝を付けて合掌しているのが勢至だ。ポーズ以外は何の違いもない。

像のサイズに比べて壇が大きく、スペースが勿体ない。後には胎蔵・金剛両界曼荼羅。阿弥陀と曼荼羅が繋がらない。不自然な組み合わせだ。


落ち着いたつくりの本堂です。参拝客はたくさん居るのにみんな本堂には近づかない。

本堂後ろの宝蔵には、目的のモノがある。宝蔵入り口にはたくさんの腰掛けた年配女性参拝客。こういうのってありなのだろうか。京都の寺では考えられない光景だ。


ピース文殊。何という印相なのか分からないが、とにかくピースだ。ただし、獅子に乗っているわけでも、剣を持っているわけでもなく、宝冠を被っているわけでもないので、文殊菩薩と言われなければ分からない。

 
宝蔵左に安置されている閻魔像と司命像。閻魔は顔が赤く塗られ、憤怒の表情を逞しくしている。司命は虎の毛皮を敷いた椅子に座っているのが分かる。心なしか虎の目も、こちらをニラんでいるようだ。筆もセットで作られている。

本堂と宝蔵以外に目立った物件はない。拝観料400円は少し高いが、ハイキング客対応料金とすれば仕方のないことかもしれない(安くなるともっと押し寄せてしまう)。


ずいぶん上ってきただけあって奈良市街がよく見えた。

白毫寺は高円山の麓に位置する。そういえば中学の修学旅行では、高円山の山頂にある高円山ホテルに宿泊した。当時オートロックを知らず、間違ってドアを閉めてしまい、先生に気づかれぬよう鍵をフロントに借りに行った(まさかホテル側が客である生徒に不利益となる余計なチクり行為はするまいとの思惑があった)のを思い出す。夕食はやっぱりすき焼きだった。やけにゴボウが多かったなぁ…。ゴボウ入りのすき焼きはこれが最初で最後だった。かさ増し要員だったのか? しかし何で修学旅行の夕食はすき焼きなんだ?


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