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武州北部の諸寺 2008年1月26日

成身院

じょうしんいん

埼玉県本庄市児玉町小平597

寄居駅下車 徒歩45分・車5分

マピオン

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成身院

今回、マイミクである「まんじまる」さん(運営ブログ「まんじまる流」)のお誘いをうけて、埼玉県の北部の諸寺を巡ることになった。

メインは、さざえ堂の中で未訪問となっていた成身院。そして、まんじまるさんが「発掘」したという真東寺。

このサイトでもさんざん紹介してきたが、さざえ堂について改めて説明すると、主に三層で、しかも往路と復路が交わることがないような動線が確保されているという堂宇のことである。一階から三階へ上り、また一階へ下っていくのが「さざえ」の殻のように螺旋状になっていることが、その名が付いている。

さざえ堂の宗教的意味としては、仏の回りを右回りに三回まわるのは最高の帰依表現ということで、三層を右回りに回ることで実現するということ、また、各層には西国三十三カ所、坂東三十三カ所、秩父三十四カ所の各札所の移し本尊が安置されており、それらを漏れることなく参拝することができることから、ミニ移し霊場としての意味も持っている。つまり、この堂宇に入って出てくるだけで、100箇所の札所を回ったのと同様の「効果」があるということだ。

その機能性もさることながら、日本では珍しい多層建築であることと、動線が交わらないということは、それだけ複雑な経路を設定しているということで、さながら迷宮のような様相を呈している点でも貴重な堂宇である。

さざえ堂が建立されたのは江戸時代後期。当時、三階立てという多層建築は珍しく、しかも庶民が自由に参拝できるという点において、一つの庶民の特殊な景観を観たいという欲求の高まりが反映されたものと推測できる。

また、同時期には、各層に床のある、つまり登れる五重塔や三重塔や山門などが出現している。それまで仏舎利塔としての意味しか与えられておらず、人が内部に入って登るようなことを想定していなかった建築に、人が登るという機能を付与しているのである。

さらに、消防法によって新規に木造の三階建てを建築することは禁じられている現在においてもさざえ堂は希少な堂宇である。

そんなさざえ堂は、現存しているものとして、青森県弘前市、福島県会津若松市、群馬県太田市、茨城県取手市がある。西新井薬師にもあるというが、ちょっと微妙である。消失したものとしては、新潟県や山梨県にもあったという。いずれも東日本である。

系統を分類してみると、会津系と、関東系の二種類があるかと思う。会津系は、会津若松と弘前の二つで、床がスロープになっており、頂上で下りのスロープへ連絡するという、まさに「さざえ」堂というもの。

一方、関東系は三層の堂宇であり、階段で各層をつないでいる。

まんじまるさんには親切にも車を出して頂いた。

成身院の拝観は予約制。到着したが、管理人は不在だった。予約してくださったまんじまるさんが電話をかけ、ようやく管理人が到着。この拝観に乗じて、管理人は知り合いを三人ほど連れてきた。

まずは外観から。外観は太田市のさざえ堂と似ている。が、スタイルはほっそりしていてこちらの方がバランスがいい。

装飾性も高い。破風のすぐ下は鳳凰、その奥には二対の麒麟、そして梁の間には龍。

鰐口が下がっている格子天井には草花の絵。そして中央には龍。

 

とりあえず今回も図解。やっぱり縮尺はいい加減。青い線が登り(往路)の動線、赤い線が降り(復路)の動線。矢印のIDは画像のIDと対応している。なお、往路はピンク、復路は緑。

1A。一階の入り口、内陣前に立つ。内陣と外陣は網のある格子で仕切られている。そして二階はなんと既に上に見えている。一見すると、堂宇の内部にもう一つの堂宇が入っているようなのだ。

1B。一階には秩父三十四カ所の移し本尊が据えられている。それぞれの間にしきりは設定されていない。

右側の白壁の中は内陣。

一階通路すぐ上の軒下(二階「ベランダ」部分の下)には装飾がほどこされている。波と鶴か。

1C。一階の通路と内陣の間の白壁には格子があり、その隙間から内陣を撮ってみた。左には二階からの降り階段(復路)がある。

1D。一階北側の通路。

32番法性寺の移し本尊。まんじまるさんによると、法性寺の本尊は船に乗っているということで、それぞれの本尊がわりと忠実に移されていることが分かる。

1E。二階への階段。

回りを水色で表現しているのは、一階と吹き抜けになっているため。

2Aと2B。一階からの階段を上りきったところ。ベランダのようになっている部分が、二階の通路。この構造はかなり珍しい。右画像の右下に見えるのは、一階の秩父三十四カ所の移し本尊が安置されている部分の屋根。

2C。一階から二階へ上がったとき、すぐに三階への階段へと人を進ませないためのしきりがあるが、そこには絵が描かれている。獅子の親子。親の視線が鋭いが、垂れ耳なのが若干可愛い。

このしきりはいきなり三階への階段を見せないことで、参拝者が進むべき方向を定める重要なアイテムになっている。

2D。二階には坂東三十三カ所の移し本尊が安置されている。安置方法は一階と変わらず。

2F。入り口が望める。

2Eと2J。一階内陣の真上にあたる部分にも、移し本尊が安置されている。なぜか二階中心部分入り口真上には、籠が下がっていた。

2H。中心部分を正面から。中心の厨子には移し本尊ではなく、阿弥陀三尊(たぶん)が。上に掛かっている仏画も、おそらく阿弥陀三尊。

2G。中心部分東側には、左から阿弥陀、薬師、釈迦の三如来。

2I。中心部分の西側には、三階から降ってくる階段と、さらに一階へ降る階段の通路が見えている。このように、復路の一部を見せることによって、この堂宇の不思議さを醸し出しているように思う。

2K。二階西側。

2Lと2N。二階東側。通路のしきりには、クジャク。この裏に獅子が描かれている。

2Mと2Q。ここにきて、一階からの登り階段と三階への上り階段が同時に見えることになる。

三階には、西国三十三カ所の移し本尊が安置されている。

3A。これまでよりずっと狭い通路が設定されている。この通路のいじらしいところは、左側の壁が三階の全体像が一気に見えてしまわないように設置されていることだ。まんじまるさんもこの堂宇の「見せ方」に感心していた様子だった。

3B。三階の西側。振り返ったところ。

3D。三階の中心部分。中心にぽつんと安置されている移し本尊の両側は開いているおかげで、この中心部分に入る前に、ちらちらと内部を見せるいやらしい作りになっている。

3C。三階の中心部分にも動線が確保されていて、この中心部分にやってきてすぐに降り階段に行かないようになっている。

三階の天井は格子になっており、その一つ一つに絵が描かれている。羅漢や十二支、草花など。

中心には三人の天女が。

ウサギを見つけた! 背後には心なしか満月のようなものがうっすらと…。ウサギと一緒に餅つきてぇなぁ。

再び二階へ。

2Qと2P。復路で再び二階の中心部分を見ることができる。ただそのまますぐに一階へ降ることになる。

一階に戻ってきた。

1H。階段を下って振り返ったところ。この位置から三階の明かり取り窓が見える。

1Iと1K。一階に降って内陣を見る。内陣の様子は、復路でようやく見ることができるようになる。

1L。向かいには二階からの階段が見える。

1Mと1F。一階の中心部分から出て振り返ったところ。右には一階から二階へ昇る階段。

1Nと1G。凄い堂宇だった。外観は太田市のさざえ堂と似ているが、内部構造は全く異なっていた。

太田市、取手市、を関東系とひとくくりにしてしまったが、その内実はそれぞれ全く違ったものだった。それぞれが個性的であり、全てを訪れる価値はある。

「各階全て同じ「コの字型」のルートではなく、二階の舞台作りを思わせる空間、三階の戒壇めぐりを思わせる空間とまさに多彩。舞台作り、戒壇めぐりもお寺における人気の要素の一つで、さざえ堂にさらにそれらの要素を組み合わせたこの建築が面白くないわけがない!」とはまんじまるさんの言。

私も同感です。奇抜さでは会津のさざえ堂ほどではないにしろ、設計者はなかなかの建築マニアとみた。

ちょっと欲を言えば、三階から一階までまっすぐ降りてしまうため、復路の二階部分に、もうちょっと工夫があればと思う。たとえば、二階の中心部は、三階のような動線確保が不十分なので、往路にはちらちらと見せるようにし、復路にあの部分をぐるりと回るような経路などはどうか。

ただ、それだと坂東三十三カ所が二段階に分断されてしまい、さざえ堂本来の機能である「百カ所めぐり」が不完全になってしまう。やっぱり復路はどうしても単調なものになるしかないのか…。あるいは会津若松のさざえ堂が、復路の単調さを解決したのかもしれない。

さらにまんじまるさんには「最後にせっかく今までの巡拝ルートで秘密の存在にしていた一階の中心部の部屋まで降りるのですから、その部屋にもう一工夫あったらちょっと面白いかも。」と、一階部分の動線についてのアイディアを披露して頂いた。

さざえ堂の拝観後、公民館のような建物で管理人から少しお話を訊かせてもらった。内部にはさざえ堂に関する資料などがあった。

成身院の本堂写真。左側の茅葺き屋根の堂宇が本堂。左の瓦屋根が庫裡だろう。手前には茅葺きの鐘楼がある。大正8年、焼失してしまったとのこと。

こちらはさざえ堂の図だが、現在の堂宇と比べて火頭窓の数が多く、異なる時期のものらしい。

由来はよく分からないが、屏風絵として貼られていた水墨画。豊干禅師だろうか。とすれば、寒山・拾得もあったはずだ。

最後に山門を。車で来たため、順番が逆になった。やっぱり後ろのスペースは物置になってしまっていた。


阿形の仁王はどちらも白目、吽形は片目だけ白目。怖いよ…。

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