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越南漫遊記 2010年5月24〜30日

出発前の能書き

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はじめに

入籍してから1年が経とうとしている5月末に、ようやく新婚旅行に出かける目処が立った。

国内旅行派の自分は、最後まで「九州たっぷりコース」にも拘っていた。また、持病があり、見知らぬ土地へと繰り出すことに不安を感じていたからだ。しかし堂々と長期休暇を取れるチャンスは新婚旅行くらいしかないので、結局海外にした。

最初はヨーロッパ、特にイタリア、フランス、スペイン(アルハンブラ宮殿)、ギリシア(メテオラ)にしようかと思っていた。ご飯も美味しそうだし、建築物が素敵だからだ。他にトルコ(カッパドキア、パムッカレ)やエジプトも本気で考えていたが、何か取って付けたような感じが否めなかった。

そこで、どうせ行くならば「新婚旅行だから」ではなく「前から行きたかったから」という理由のほうが良いと考え直し、結局ベトナムにした。

では、何故自分はベトナムに行きたいと思っていたのか。

私がベトナムに行った理由

私がベトナムという国を初めて意識したのは、2002年頃、北海道テレビで制作された深夜のローカル番組である「水曜どうでしょう」の最終回の企画「原付ベトナム縦断1800キロ」(以下「原付〜」)のDVDを観てからだ。

企画のタイトルからも分かるように、ハノイからホーチミン市までの1800kmをベトナムで普及している原付バイクで走行するという過酷な内容だった。出演者の鈴井・大泉両氏は、6日間かけて走破し、ゴールのホーチミン市内のホテルで号泣した。

最終日の感動的な流れもさることながら、私が一番印象に残っているのは、ベトナム中部で大泉たちが訪れたホイアンという街だった。そこには通称「日本橋」という、屋根付きの小さな橋が架かっていた。この名は、16世紀頃に形成された日本人町に住んでいた日本人達が建設に携わったことに由来している。中は日本の寺院でよく見られるような木造の橋そのものだったが、そこにはエキゾチックなランタン(それにはカタカナで「フェイフォ」と書かれている)が下がっている上、外観は中国風という多国籍な雰囲気になっていた。これを観た大泉は「千と千尋の神隠しじゃない!?」と驚嘆していた。私も、日本とも中国ともベトナムとも言い難いその特殊な建築を、是非いつかこの目で観てみたいと思ったのだった。

またホイアンには、日本のどこかの街道沿いかと思われるような、あるいはどことなく昭和30年代の光景かと思われるような町並みが広がっていた。どこからともなく「ピロピロピロピロ…」というのどかな笛の音が聞こえ、そしてベトナム独特の傘を付けて両天秤で物を運ぶ人が通り過ぎて行くカットも挿入されていた。こんな「懐かしい」風景が、ベトナムという国にあるのかと思った。

また、ベトナム各地で昼食をとるカットも挿入されているが、大泉はそのどれをも「おいしい」と言って食べていた。彼は味にうるさいことで知られている。基本的に旅行嫌いの彼にとって、無理矢理連れていかれる旅先では食べ物だけが楽しみなのだが、ヨーロッパに行けば、いちいち朝食に出てくるチーズやパンの食事がまずい、オーストラリアでは肉がカタい、アメリカではいちいち食べ物がまずく、マトモなのはファストフードだけ、などさんざんな目に遭っていた。しかし、そんな彼がベトナムでは「過酷な旅だが、食事のおかげで頑張れる」と発言していたのだった。実際、画面に現れるエビやカニ、野菜炒めなど、どれもが美味しそうに見えた。

それと、赤い土、生い茂る緑など、眼に鮮やかな色が写っており、日本とは全く異なるその植生に惹かれた。

そして何より、強く印象に残っていたのは、交通ルールを無視したたくさんのバイク。ベトナムでは車が充分に普及しておらず、ベトナム人は原付バイクを日常的に使っている。都市部では、昔の北京の自転車の光景のように、バイクが群れを為して走っていた。信号機もあるのかないのか分からない。車線も基本的に無視するし、ヘルメットもかぶらないし、バイクの群れの中には自転車で長い竿や門を運ぶ人もいるし、バイクの群れを悠然と横切る人もいるわで、出演者もディレクターもその光景に驚き、とまどっていた。

このような強烈に印象的なベトナムの光景が強く目に焼き付いたのだが、それから私は京都を中心とする国内の寺院ばかりをめぐる旅に夢中になり、しばらくベトナムという国を顧みることはなかった。

そして2008年頃、「世界の果てまでイッテQ」という番組でオセロの松嶋が世界遺産を巡る企画を観たことで、再びベトナムへの憧れが刺激された。番組では松嶋が「海の桂林」と呼ばれる、ベトナム北部に位置するハロン湾を訪れていた。画面に映るその光景は、まさに絶景というべきもので、ベトナムはバイクだけじゃないんだと再認識することになり、このことがきっかけとなり、新婚旅行先をベトナムとしたのだった。

旅の概要

今回申し込んだのは「ベトナム縦断 世界遺産ハイライト7」というツアー商品。7日間をかけてベトナムを縦断し、世界遺産を巡っていくというもの。ハノイから出発してホーチミン市で終わるというその行程は「原付〜」と同じであり、途中あのホイアンの「日本橋」も見学する。

ツアーのルートは、ハノイ(ハロン湾クルーズ、バッチャン村訪問)、フエ(カイディン帝廟、グエン朝王宮、ティエンムー寺院、トゥドゥック帝廟)、ホイアン(来遠橋、福建会館)、ホーチミン(メコン川クルーズ)と盛りだくさん。日本と同じくらいの広さを持つベトナムをたった7日間で巡るので、駆け足になるんだろうなぁという思いはあったが、せっかく行くなら滞在型よりかはいろんなものを観たいと思った。

ただし自由行動は一切設定されておらず、現地ガイドの案内に任せるので、融通が利かないのが玉に瑕。ただ、ホテルにチェックインした後などは当然自由なわけだし、ひょっとしたら時間が余った場合に自由行動もさせてくれるかもという期待を持っていたので、『地球の歩き方』を買って、設定されているスポット以外も予習しておいた。

旅のルート

1日目は成田を11時に出て、ハノイに15時半着。実際には6時間のフライトだが、日本とベトナムとでは2時間の時差がある。西に飛ぶので2時間の得をするわけだ。名物と言われる水上人形劇を見て夕食はベトナム料理を食べ、ハノイで一泊するのだが、正直水上人形劇はあまり見ても見なくても、という感じだ。

2日目は朝からハノイを出発して、ハロン湾クルーズ。鍾乳洞も見学するようで楽しみだ。昼食は船上でシーフード。実際ハロン湾クルーズには一泊二日もかけるツアーもあるそうなので、今回の日帰りのプランは割と駆け足な行程になるのかもしれない。そもそも7日間でベトナムの世界遺産を見て回ろうというこのプラン自体かなり無理のあるものだろう。実際都市間移動がハンパじゃない。たとえば、ハノイからハロン湾まではバスで3時間だ。

ハロン湾からハノイに戻ったら、今度はバッチャンという村で焼きものを見学する。通称バッチャン焼きというのだが、中国の陶磁器からの影響を受けているそうで、色付けがかわいい感じだ。茶器を買って帰ろうと思っている。夕食は西洋料理。ベトナムまで来て西洋料理かと思うとちょっと残念な夕食だ。

3日目はハノイからフエへ移動。建築マニアの私としては、ベトナム旅行一番の楽しみがこのフエ。フエは19世紀に成立したベトナム最後の王朝であるグエン朝(阮朝)の都だったところで、歴史的建造物がたくさんある。行程に入っているのは、カイディン帝廟、グエン王朝宮、ティエンムー寺院、トゥドゥック帝廟で、帝廟というのは、グエン朝の皇帝のみたまや。王宮は清朝の紫禁城を意識して建てられたものらしく、かなり興味がある。なぜなら、王宮とは皇帝権力を演出する舞台装置であり、そこには必ず何らかの「仕掛け」がしてあると思うからだ。紫禁城に比べるとだいぶ小さいものだが、それでもじっくり見ると1日はかかるようだから、どれだけ見学できるのか不安でもある。王宮の見取り図をネットで手に入れることができたので、充分な予習をした上で見学に臨もうと思う。今自分が何を観ているのか、そしてそれがどこにあるのか分からないのでは勿体ない。とりあえず、フエでは19世紀の歴史を追っていく感じだ。

4日目は二番目に楽しみなホイアン。「海のシルクロード」の拠点となっていた都市だそうで、日本人と中国人とインド人が都市造りに関わっていて、既に書いたようにどこか日本チックな部分もあるそうだ。街全体が世界遺産となっている。ここでは、16世紀あたりの歴史を追っていく感じだ。ホイアンでの見学ルートは、来遠橋(「日本橋」)、福建会館、海のシルクロード博物館、フーンフンの家、ランタン作り、なのだそうだが、ランタン作りは要らないと思う。これは見て楽しむものだと思うし、持ち帰るにはかさばりそうだ。作る時間がもったいないので、できればその時間を見学に回したい。

自由時間があれば、可能ならホイアンから45kmの場所にあるミーソン聖域というところにも行ってみたい。タクシーを飛ばせば3時間くらいで往復できる感じだ。これは7世紀の遺跡で、チャンパ王国のもの。

ところでホイアンでは満月の日に夜祭が執り行われ、街全体がランタンで飾られ、露店が出るようだ。調べたところ、全く狙ったわけではないのに、なんとホイアンに滞在する夜が満月であり、夜祭の開催日にヒットしていた。嬉しい偶然。ホイアンの夜景を楽しんでこようと思う。

5日目は最後の都市ホーチミン市へ。統一会堂、サイゴン大教会、中央郵便局、ベンタイン市場、人民委員会庁舎、シクロ乗車体験がホーチミン観光ルートに入っている。ホーチミンでは近現代の歴史を追う感じだ。ただ、これらのほとんどが外観からの見学となっており、かなり残念。中央郵便局では余裕があれば、ベトナムの切手を買いたいと思っているのだが、適うかどうか…。

6日目はホーチミンからメコン川クルーズに出かける。

7日目は機中泊で成田空港へ。帰路の移動で終わる日だ。成田には7:30に着くそうだから、この日は帰ったら一日寝ているかもしれない。次の日は仕事だ。

持って行ったもの

・薬:胃薬、頭痛薬、酔い止め、下痢止め、持病の薬
飛行機では必ず酔ってしまって苦労しているので酔い止めを準備してみた。効き目にはあまり期待していない。眠気を誘ってもらってそれで酔いを紛らわせることができればと、気休め程度に使う。下痢止めはやはり必要かと思った。生水や生野菜は徹底的に避けるが、それでもお腹を下すことがあるかもしれないからだ。

・帽子、日焼け止め
酷暑対策。5月は最も暑くなるらしいので、必須だと思った。ちなみにスコール対策として傘は役に立たないという。それよりはカッパが有効だそうで、ネットで得た情報ではスコールになるとどこからともなくベトナム人がわらわらと現れてカッパを売りに来るのだそうだ。持って行けば荷物になるので、そうやって現地調達してしまうことにした。

・夏服
ある限りの半袖シャツを探し出して日数分持って行った。ちょうど日本でも衣替えの季節が近く、都合がいい。荷物が少なく小さいのは助かる。

・デジカメ、3GB分のメモリ、充電式電池・充電器、三脚
これまで512MBのメモリを二つ所持していたが、2GBのメモリを買い足した。3GBもあれば十分だろうということで。
電池を沢山持って行くと重いしかさばるので、今回充電式電池を購入した。ちなみに私が電池パック式のデジカメを嫌うのは、コンセントの無い環境で突然電池残量が無くなるのは困るから。ベトナムの電圧は220Vだが、買った充電器は100-240V対応なので変圧器は要らない。
それよりも心配していたのは、コンセントのタイプ。調べてみると、どのホテルも日本のようなコンセントではないらしい。そのため、直前になってamazonでプラグ変換器を注文したのだが、間違えて「日本に来た外国人用」のプラグ変換器を買ってしまった。これでは役に立たないので、いざとなればホテルで変圧器を借りることとした。
三脚は今回の旅行のために初めて買ったもの。夜景や室内を綺麗に撮るため。フラッシュを焚いてしまうと雰囲気が出なくなる。滅多に行けるところでもないため、撮影機会を大切にしたい。

・SONYのWALKMAN
フライト時など閑な時に使うため緊急購入。2GBの容量で5210円。PCにUSB接続することで充電できる。1分の充電で1時間持ち、最大30時間持つというので、フル充電しておけば旅行中十分持つだろう。前日にせっせと音楽データを移行していた。FMも聴けるので、ベトナムの放送も受信してみようと思う。

・各遺跡に関する資料のコピー
ある程度予習をしていた。パックツアーなので、じっくりと観るのは不可能だろうと考え、時間を効率的に使うために下調べをしておいた。

・いくらかのお金、クレジットカード
パッケージツアーであり、ホテル代、食事代を全て既に払っているので基本的にはいらないのだが、現地で水を調達するのには必須。あとはみやげもの用。カードはいざという時、何かと頼りになりそうだから。ただし盗難には気をつける。

・携帯電話
ベトナム国内での通話は勿論、海外(この場合日本)への通話は基本的にしないが、いざという時のために。

・時計
ダイソーで手に入れた100円のもの。本来はストップウォッチだが、時計機能、アラーム機能を持っているので。

・パスポート
海外で身分を証明する唯一の書類として当然必要。

主な荷物は以上。既に持っていたバックパック一つに全ておさまった。あとは、貴重品を入れておく肩掛けバックをユニクロで緊急調達。今回の旅で役目を終えるはずなので1990円のもので十分だ。スリ防止のため、常に財布はズボンの前ポケットに入れておく。ズボンと靴も緊急調達。ズボンは薄くて軽くてすぐ乾きそうなやつ。靴も緊急調達したスニーカー。歩き安くて軽いやつ。雨が降ったときに泥で汚れても構わないもので。ちなみに置き引き防止のため、肩掛けバッグはいつも身につけておくようにした。ひげそりは持っていかなかった。髭は伸ばし放題にする。

さて、能書きはこれくらいにして、次のページから実際の旅行記を綴っていこう。

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